Middle 03 Scene Player ──── ブレイク
特に問題なくレダと合流することが出来た。
それと偶然見つけたこの女性も、どうやら二年前に全く同じ経験をしているらしい。
はっきりとした覚えはないので二人の記憶だけが頼りだが、少なくともレダのことは信用している。疑う必要もない。なれば、脱出する前にこの中を調べてみるのも悪くないだろう。
ブレイク:合流したまではいいが、この後はどう動いていけばいいんだ?
GM:ここからの脱出を目指すことになります。本の中から脱出すると宣言して頂くだけでも可能ですが。
ブレイク:それは却下だ。じゃあまず、雑木林の中を歩いてみるか。
GM:ブレイクが歩き出そうとすると、腕に重みを感じます。
アンジュ:あっ! アンジュはまだブレイクの腕に引っ付いたままか!
ブレイク:気にせず歩き出そう。
アンジュ:ブレイクが動き出したので慌てて離れるよ。どこに行くんですか?
ブレイク:どこって、本の中から出る方法を探しに。
レダ:前回と同じなら、本の主がどこかにいるはず。アンジュさんもついてくるよね?
アンジュ:出来れば、ご一緒させて頂けると嬉しいです。ここに一人でいるのは、その……。
ブレイク:いいよ。置いてくつもりもないから。
アンジュ:ありがとうございますっ! 改めまして私、アンジュといいます。どうぞお気遣いなく、呼び捨ててください。まだオーヴァードの力はうまく使いこなせないのですが、精一杯頑張ります。
レダ:こちらも自己紹介がまだだったね。私はレダ。普段はある小さな図書館の司書を務めている者だ。アンジュと同じでオーヴァードだよ。
アンジュ:よろしくお願いしますね、レダさん。で、次はブレイクの方を見るよ。
ブレイク:……? ああ、俺? ブレイクだよ。
アンジュ:ブレイクさんですね。よろしくお願いします。……えっと?
ブレイク:なに?
アンジュ:あ、いえっ。何でも、ありません……。
レダ:ごめんね。彼は人との距離の詰めかたを苦手としているんだ。そっけなく感じるかもしれないけど、怒ってるわけじゃないから。
アンジュ:それを聞いたアンジュは一つ頷くよ。顔には緊張してますって書いてあるけど、お陰で先ほどまでの恐怖は鳴りを潜めてる。
GM:それでは、ブレイクを先頭にして雑木林の中をとりあえず歩くことにした三人の前に現れるのは木ばかりです。道と呼べるものもなく、もうどこから自分たちがここに迷いこんだのかさえ分からない。この感じも二年前と同じです。
ブレイク:指針なく動いても無駄そうだ。レダ、これも前と同じ?
レダ:残念ながら変わってないみたいだよ。逆を言えば、前と同じことをすれば出れる可能性が高い。
GM:二年前の脱出方法は本の主になっていたジャームを倒したわけですが、前回はそのジャームの方から寄ってきた感じでした。
ブレイク:俺たちが見つけたわけじゃないのか。レダ、と一言呼んでみよう。
レダ:視線を向けるよ。
ブレイク:危害を加えられそうな心当たりは?
レダ:私自身に対して恨みを持ってそうな奴がいるかってことだよね? いや、ないよ。
アンジュ:……あ、さっき言っていた、誰かに狙われてるのかもしれないって言ってたことですか?
ブレイク:それ。俺たちは二年前にここで集まった。それは偶然だ。だけど、偶然は二度も起きない。起きたとするならそれは偶然じゃない。必然だ。
レダ:――誰かが仕込んだ?
ブレイク:元々、唯一の本は謎だらけだ。絶対数は少なく、起こった事例はどれも統一性がない。ただ迷い込むだけで終わったり、レネゲイドに感染したり、本の主を倒さないと出れなかったり……。
アンジュ:そういう風に聞いてみると、不安定な感じですね。
ブレイク:不安定か。良い表現だ。唯一の本というものが人の手で作りだされているものだとしたら、まだ不安定なのかもね?
レダ:唯一の本の出来上がる経緯は自然なものではなく、作りだされた物だと?
ブレイク:確証はない。全部たらればだよ。
GM:面白い考察ですね。しかし、それらが脱出の糸口に繋がるかと言えばノーでしょう。今も歩いてはいますが景色が変わるような気配もありません。同じところを回り続けているような感覚です。
アンジュ:GM、この唯一の本の中に広がる空間って、世界で一つしかない物語が綴られてるんじゃなかったっけ?
GM:おっ、そうですよ。
アンジュ:その割には雑木林が広がってるだけなの?
GM:物語と呼ぶには簡素すぎると言いますか、もはや絵本にも満たないレベルの内容と言わざるを得ないですね?
ブレイク:これは盛大なヒントだと予想する。
レダ:うーん。まず、世界でたった一つの物語ってなると、この世に一冊しかない本ってことになるよね。
アンジュ:それって現実的じゃなくない? 本なんて何冊も同じものが刷られるし、何千年も昔のものだったとしても、保存するために残ってる部分は複製したりするでしょ。
ブレイク:もしもこの世で一冊だけの本が存在したとしても、それが俺たちの手元にやってくる確率も限りなくゼロに近い。いくら図書館で本が集まりやすい場所だからって、そんな代物は取り扱わないだろ。
GM:ちなみにですが、唯一の本になっていた元の本はごくごく普通の本ですよ。何冊も刷られていますし、大体の書店で売り出されてます。今回レダが開いた『過去の手放し方』という本も別にこの世で一冊しかない、なんて大層なものではないです。
アンジュ:ですよねえ……。
GM:良いところに着目したのは間違いないです。ということで、雑木林の中を歩いて回ったものの何も見つからなさそうだという場面でシーンを切ります。
Middle 04 Scene Player ──── アンジュ
何処まで行っても視界に入ってくるのは木だけ。
命の恩人がいるということは間違いなくアンジュの心に希望を与えているが、それでも全く不安がないとは言えない。
本当にここから出ることが出来るのだろうか?
GM:次のシーンは当てもなく歩いていても無駄だと分かり、立ち止まったところからです。
アンジュ:活路が見出せません!
GM:その状況にアンジュは徐々に不安を抱くでしょう。いくら恩人が傍にいてくれているとはいえ、前回は早々に本の中から出て行ったわけですから、自分の足でこの中を歩いているというのは相当なストレスを感じるはずです。
アンジュ:どうしよう。人としてと言われるとほとんど見ず知らずの人だけど、恩人である二人には勝手に大きな期待を寄せてるのも事実なんだよね。
GM:まさにヒーローのような存在ですからね。そんな彼らにお礼も言えないまま二年も時が過ぎているわけですから、余計に記憶は美化されているでしょう。
アンジュ:さらにレダは人当たりも良くて気を遣ってくれているとアンジュにも分かるほどだし?
レダ:間違いなく日常の話を振ったりしてる。異常な光景から出来るだけ目を逸らせるように。
アンジュ:ブレイクも淡泊だけど、ここからの脱出方法を一番考えてくれてるから、もう二人に甘えっきりだね。
GM:しかし、その二人でも脱出の方法が分からない。正確には本の主を倒せば良いとまでは分かっているけど、肝心の本の主が見つからない、といった感じですね。
アンジュ:二人がそれを顔に出すとは思わないけど、アンジュも流石に馬鹿じゃないし、今の状況が悪いものだと分かるわけだね? 最初は二人に任せておけば大丈夫だと思ってたけど、そうも言っていられない。どんどん顔に不安ですと出てくるわけだ。
レダ:私はそれに気付ける?
GM:<知覚>で判定しましょう。アンジュは顔に出やすいみたいなので、目標値は6です。
アンジュ:良くも悪くも素直だからね!
レダ:7で成功。危ない。
GM;アンジュの顔に不安や恐怖、焦りといったものが浮かんでいることに気付きます。
レダ:なら話を振ろう。そういえばアンジュは図書館にきて、何を借りたかったの?
アンジュ:いえ、私は本を借りに図書館に来たわけじゃなかったんです。実はUGNの者で……。
レダ:驚きはしないかな。オーヴァードが一人で生きていくにはまだ難しい時代だし、ある程度の知識を持ってるところも見てるから、何となくは予想がついてた感じで。
アンジュ:オッケー。それで、あるオーヴァードと……えっと、お話をするつもりだったんですけど。
レダ:足を踏み入れたらここに連れ込まれたと。何というか、申し訳ないことをしたな……。
アンジュ:いえ! 決してレダさんが悪いわけでは! 本当に、運が悪かっただけです。
ブレイク:その探してるオーヴァードって、特別な奴?
アンジュ:あー、その。えっと……。と濁そうとしてるよ。下手くそだけど。
ブレイク:俺のことだよ、それ。
アンジュ:えっ?
GM:ちなみにアンジュに言い渡されている指令だけど、あるオーヴァードの情報として古代種であり特別な影を操る手練れだと聞かされてる。
アンジュ:ほうほう。なら最初に見たブレイクの影の操り方を思い出して、ピンとくるかな?
GM:嘘ではないだろうと思いますね。
アンジュ:結構長く生きていらっしゃいますか?
ブレイク:数百年は。見た目だけじゃ分からないだろうけどね。俺が使った影も普通のウロボロスたちとは違うって、なんとなく感じたんじゃない?
アンジュ:言われてみると、そんな気も……。アンジュはウロボロスとの戦闘経験はほとんどないから、あんま分かんないと思うけど。
ブレイク:俺の保護をしろって?
アンジュ:ドキッとする!
ブレイク:行かないよ。今までも全部断ってるから。でも、別に話ぐらいならいつでも聞いてあげていい。
アンジュ:それは、お願いするだけなら自由ってことでしょうか?
ブレイク:君、言ったよね。俺と話して来いと言われたって。
アンジュ:そう、ですけど。
ブレイク:だからいいよ。話ならいくらでもしてあげる。保護されてほしいってことだけは聞かないけど。
レダ:これがブレイクなりの距離のつめ方なんだ。分かりにくいでしょ?
GM:話していいよっていうのが、貴方のことを拒んでませんよっていう表現なわけですか。これは分かりにくいですね。
ブレイク:でも、らしいだろ?
アンジュ:いいねー。好きだよそういう奴ー。じゃあレダに耳元でアドバイスを貰ってようやく理解したアンジュは、ちょっと呆気にとられた後にはいって返事するよ。
ブレイク:これでちょっとはアンジュの顔から不安とか消えたか?
GM:状況が良くなったわけではないでしょうが、心情的には大きな安心感を得たのではないでしょうか。二人に拒まれていないんだって分かるだけでも気は晴れるでしょう。
アンジュ:だねー。いくらアンジュが絶対の信頼を寄せてるとは言え、それはあくまでも一方的なものでしかないということはブレイクとの再会を果たした時に知ってしまってる。だから改めて、ブレイクやレダの方から傍にいていいんだよって示唆されることはすごく嬉しい。
ブレイク:よし。……よしじゃねえんだよなあ。脱出方法がさっぱり分からんのだが?
GM:先ほどのシーンでレダが答えを言っていましたよ。
レダ:俺? 何言った?
そして過去ログを漁りだす三人。あれか? それともこれか? とレダの発言を巡っていくと、アンジュが閃く。
アンジュ:あ、これじゃない!? 二年前と同じことをしたら元に戻れる可能性が高いってやつ! どうよGM!
GM:二年前の脱出した経緯をもう一度おさらいしましょうか。まず三人は本の中に閉じ込められました。そしてブレイクとレダは当時一般人であったアンジュを発見し、彼女を逃がすために無理やり空間に穴を開けて逃がします。その後に本の中をちょっと歩いていると二人の元に本の主がやってきて、それを倒すと唯一の本は元の本に戻った、です。
ブレイク:はあーん、そういうことか。空間に攻撃を加え続けることが本の主を呼ぶために必要な行為だと。
レダ:筋は通りそうだ。本の主ってぐらいなんだし、そりゃ空間を壊そうとする奴がいたら止めに来るよね。
ブレイク:だな。……宣言するぞ?
レダ:いいよ。多分それで正しい。
アンジュ:言っちゃえ言っちゃえー!
ブレイク:では、この本の中から脱出する。
GM:了解しました。では宣言されたので現在のシーンはここで終了。クライマックスに移行します。その前に、ここでロイスを確認しましょうか。と言っても今回の登場人物は少ないのでロイスを結べる相手が少ないですが……。それとSロイスもここで宣言して下さいね。
レダ:空間にどれだけのダメージを与えないといけないか分からないから、ロイスを取り過ぎてもバックトラック時に経験点が減る恐れがあるな。
GM:あ、ではそこら辺の情報は公開しましょう。と言っても雰囲気だけですが。
アンジュ:二年前より堅いって情報はあったね。
GM:はい。抽象的ですが、二年前はブレイクとレダが一回ずつ不思議な力を使ったら壊れていました。今回はブレイクの一打で若干の傷がついた、です。そこにレダがもう一打入れても傷が広がるぐらいで、壊しきるには3回ぐらい必要かな? って感じです。
ブレイク:それはあくまでブレイクとレダ二人の場合なら、だな?
GM:そうです。
レダ:今回はアンジュもいるから、同じだけの打点が出るとしたら一人二回ずつだ。
そして三人は様々な侵蝕率が上がる可能性を挙げていき、ロイスの数を調整。クライマックスに移行した。