過去との決別

 昨日と同じ今日。今日と同じ明日。
 世界は繰り返し時を刻み、変わらないように見えた。
 ──だが、世界は既に変貌していた。

 彼女は昔、本の中に迷い込んだことがある。
 唯一の本――レネゲイドが宿り、人を未知の空間へ引きずりこむ本から彼女を救ってくれたのは二人の男性であった。しかし、先に本の中から脱出した彼女はすぐUGNに保護されて現場を離れたため、当時まだ本の中にいた彼らがその後どうなったのかを知ることは叶わなかった。
 それから二年――。
 UGNに保護された彼女はエージェントとなり、ある仕事を任されていた。
 保護すべき人物がいると聞き、入った先は小さな図書館。だがそこに待ち受けていた光景は、二年前に迷いこんだ本の中と全く同じであった。

 ダブルクロス The 3rd Edition 唯一の本の物語 第0話
 「過去との決別」
 ダブルクロス――それは裏切りを意味する言葉。