Middle 07 Scene Player ──── アンジュ
本の中でバラバラに行動するのは正直不安だ。でも、自分が一人になったわけではないという部分でどうにか堪えられている。
……それに、今は聞きたいこともある。
GM:今度はアンジュとブレイクの方に場面を移します。時系列としてはレダが葬儀に出ているタイミングですね。なのでレダは登場不可。場所は一先ず、護送車が止まっていたところを目指すで大丈夫ですか?
ブレイク:ああ。まずはそこまでいって、逆走する。
アンジュ:あー、GM、このシーンってなんかプランとかある?
GM:ぶっちゃけるとないですよ。レダが単独行動するのは想定外だったので。
レダ:ごめん(笑)
GM:いえ、あの流れなら順当な行動ですから問題ありません。こちらの対応力の低さが問題なので気にしないで下さいね。それで、アンジュは何かしたいことが?
アンジュ:ブレイクに詰め寄りたい(笑)
ブレイク:うん? ……ああ、レダと一緒に復讐しようとする男のことを傍観してたんだ。そりゃ聞きたいこといっぱいあるわな。
アンジュ:レダの方は何かあるって雰囲気を漂わせていたけど、ブレイクの言い分は曖昧だったからね。
GM:分かりました。ではここは護送車を探しながらアンジュとブレイクが話すシーンにしましょう。
アンジュ:ありがとう。「あの、ブレイクさん。……さっきの、ことなんですけど」
ブレイク:「さっき? どれのこと」
アンジュ:「私が色のついた男の人を止めようとした時のことです。どうして、手を貸してくれなかったんですか? レダさんは……その、なんていうか、すごく怖かったし。復讐なんて、誰も幸せにならないのに……」
ブレイク:「誰も幸せになれないことだから、してはいけないの?」
アンジュ:「えっ? だって、自ら進んで不幸になる必要、ないじゃないですか」
ブレイク:「なるほど? 確かに、それもそうだ」
アンジュ:「なるほどって……。ついこの間まで塞ぎこんでいた私がこんなこと言っても説得力はないですけど、過去にあった嫌なことにばかり目を向けてちゃダメだって分かったんです。それを教えてくれたのはブレイクさんとレダさんですよ? なのに、さっきはあんな……」
ブレイク:「それに関しては俺もそう思ってるよ。今の言葉については一語一句、アンジュに同意できる」
アンジュ:「じゃあどうして……」
ブレイク:「それはレダに聞いて。過去を引きづってるのはレダだから。俺は過去をただの通過点だとしか考えてないから、その疑問をぶつけられても分からない」
アンジュ:「違います。どうしてブレイクさん自身が手を貸してくれなかったのかを聞いてるんです」
ブレイク:「ああ、そっちか。簡単だよ。レダの様子を見たかったから」
レダ:それだけの理由でアンジュに手を貸さなかったのか……。
ブレイク:俺としてはレダが家族を失った過去にどれだけ縛られているか、判断がつかないからこうするしかなかった。おかげで今回のことで確信は持てたけどな。レダが心の奥底で何を望んているのか、っていうことは。
アンジュ:私も早く混ぜてくれー(笑)
レダ:アンジュだけ知らないからね(笑)
アンジュ:話を戻そう。「レダさん、何かあるんですよね? いつもはあんなに優しい方なのに、さっきだけはまるで別人でした。男の人が復讐を遂げることを望んでいるようで」
ブレイク:「望んでいたよ。そして自分も同じことをしたいと考えているんだって、俺もさっきので確信した」
アンジュ:「何があったんですか?」
ブレイク:「それは俺からは言えない。知りたかったらレダに直接聞いて。答えてくれるかは知らないけど」
アンジュ:「……そう、ですね。レダさんの過去をブレイクさんから聞くのは失礼でした」
ブレイク:「聞かない方がいいとだけ、忠告しておくよ。どうしようもないことを知るだけだから」
アンジュ:「それは構いません。レダさんの力になれるなら、いくらだって悩みます。私、お二人に恩返しするって決めてますから」
ブレイク:「だったら復讐の手伝いをする方が早いと思うけど」
アンジュ:「恩返しって言ってるじゃないですか。私が受けたことと同等のものを返すから恩返しなんですよ? 率先して悪いことに手を貸してどうするんですか」
ブレイク:「復讐は悪いこと、って考えは変わらないんだ」
アンジュ:「はい。綺麗ごとだって言われるでしょうけど、復讐を始めてしまったら最後、ありとあらゆることに対して復讐し続けないといけなくなる気がするんです。だから、ダメです」
ブレイク:「そう。悪い考えではないと思うよ。幼稚だとは思うけど」
アンジュ:「一言余計ですってば!」
ブレイク:「みんな、君ぐらい前向きならいいのにね。過去に縛られるなんて、もっともくだらない行為だ」
全面的にブレイクは同意してくれている。だというのに何故、最後に放たれたブレイクの言葉がこんなにも引っかかるのだろう?
これはきっと、あれだ。うまく言えないが、何かが違うのだ。過去に対し、根幹ともいえるべき大事な部分に大きな相違がある──。
だからだろうか? ブレイクに対して恐怖を抱いたのは。
アンジュ:あれぇ……?
GM:良い感じですね。アンジュがブレイクに抱いていた不信感は消えたでしょう。隔意も感じたとは思いますが。
アンジュ:うん。うん? 手を貸してくれなかったことに対しては今も納得してないけど、自分の考えを全面的に受け入れてくれたことは嬉しいよ? ……じゃあ手伝えよ! って思いは強くなったけど(笑)
ブレイク:知らなきゃいけないことがあったんだ、許せ(笑)
レダ:これ、実はレダが一番黒いものを心に抱いてるまである?
GM:過去に起きた事件の内容があれですから、自然と言えば自然な気もしますが。
アンジュ:いやいや! ブレイクも大概だよ! これは過去への考え方に壁があるよ!
GM:最後に少しだけ描写を入れてシーンを切りますね。先ほどの護送車を男が襲った時のことについて話をして、ブレイクやレダの考えに少し触れたアンジュは色々と思い悩むことも増えたが、今は護送車を探すことに集中する。そして二人は護送車が見つかった場所に辿り着き、今から逆走して探しに行こう、とする場面で切ります。……さあ、クライマックスに行きましょうか。
アンジュは≪不死者の恩寵≫でHPを全快。