Be made to drink mysterious medicine

「……っ、ん……ぁ」
 力いっぱいにシーツを握りしめ、ダブルベッドの上で必死に声を噛み殺している女性がいる。そんな彼女の甘い声が聞きたくて、責め立てている男はサラサラの銀髪を何度も大きく揺らす。
「声、我慢するなよ」
「ん……んっ! んんっ……」
 一際激しい責めに身体を震わせながらも、声は出さないという意思表示に彼女が首を左右に振ると男は数度まばたきを繰り返し、不敵な笑みを浮かべた。
「そうか。だったら遠慮しないぜ」
 既に繋がっている部分をさらに深く沈め、最奥部を素早く小突く。最初こそ耐えていた彼女だったが、執拗な一点責めをされたせいか徐々に口が開き始め、顔が蕩けだしている。
「あ……あっ! ああぁっ! そこ、ばっかりは……もうっ……!」
 何かを堪えるようにシーツを掴んでいた手から力が抜ける。かと思えば腰が大きく跳ね上がり、伸縮を繰り返しては膣内に咥えこんでいるそれを弄んだ。
「っ……おいおい、一人で先にイッちまうのはずるいだろ?」
「はっ……ぁ……ごめ、んなさ……い……」
 好き放題に子宮口を小突いておいて“一人でイクな”と悪魔のようなことを言うこの男はダンテ。そんな彼に組み敷かれている彼女──ダイナは息も絶え絶えにごめんなさいと謝る。するとダンテはダイナの耳たぶを食みながら、わざと吐息がかかるように喋りかけた。
「謝るなっていつも言ってるだろ。……で、今日は一体どうしたんだ?」
 今までも幾度となく肌を合わせてきたが、ダイナが声を抑えようとするのはこれが初めてだった。たまに行為に入る前にちょっとした遊びを取り入れることはあるが、声を出してはいけないという提案は今までにしたことはない。
 ダンテはわざと弱いところばかり責めて、どれだけ感じさせられるかをいつも意地悪いほどに徹底する。それで声を抑えろというのはなかなかに鬼畜だ。もちろん、いつか決行して声を上げた罰ゲームとして責め抜いてみるのも一興だとは考えているようだが。
「あっ……その、私声が大きいから……嫌じゃないかなって……」
「は? ダイナの声が大きい……? 誰がそんなこと言った」
 誰かに言われたわけではないと言い足しながら、力の入らない腕を持ち上げ、恥ずかしそうにゆっくりと顔を隠す。果てた影響で頬が紅潮し、息も荒いが、それ以上に今までの自身の声の大きさが相当気になっているようで、今日は大丈夫だったのだろうかと隠しきれていない顔から瞳を覗かせ、ダンテの表情をうかがっている。
「いつも俺が一生懸命に責めて責めて責め抜いて、それでもよがってくれないって苦労してるっていうのに……」
 声を上げまいと必死なダイナも、それはそれでそそる部分がなかったとは言わない。が、やはり彼女が我慢している姿がいいとも思わない。なんてことも知らずに、どういう勘違いをしているのか声を抑えた方が喜ばれるのではと思っている、そんなダイナをもっといじめ抜こうとダンテは決意する。
「ひっ……あぁ、いま、は……あっ、んん……」
 ダンテはまだまだ元気な自分のそれで、ダイナの膣を軽くストロークする。すると抑えきれない声を漏らしながら、一つ一つの動きに丁寧に反応を示す。先ほどまでの動きと比べれば随分と優しくはあるが、今のダイナにはこれでも十分すぎる快感だった。
 そんな快楽に意識を取られそうになりながらも、さっきのように一人で果てないよう、うまく出来ているとは言えない深呼吸を繰り返しながら自我を保っている。ただ、ダイナは深呼吸のつもりでも、ダンテにとっては喘ぎ声にしか取れない。もっと声が聞きたいという欲求は本人が気づかないうちに膨らみ、ストロークはだんだんと速くなっていく。
「うぁ、あ、あっ! はや……いぃ……ダン、テ……!」
 刺激の強さに呼吸がままならなくなり、口角から涎が流れる。少しでも摩擦を減らそうと、ダンテのお腹を押し返している行為も焼け石に水。むしろ心地よい感覚にダンテが勢いづくばかりだ。
「今日は変に抵抗したり、かと思えばサービスしてくれたり……やっぱりなんかあったか?」
「なに、もっ……な、あぁ……!」
 紡がれる言葉に合わせて腰を動かしてやれば、きちんと身体と心で反応を返してくれる。彼女は決して否定的な言葉を出さないし、身を捩って逃げたりしない。それに甘えてついやりすぎてしまうのがダンテの悪い癖なのだが、今日も癖が出てしまっているようだ。
 完全に脱力してしまっているダイナの両足を大きく広げ、一度イカせたときのように深く入れ込みグラインドする。
「んあぁぁ! また……き、ちゃ……!」
 一人で果てないようにという我慢と、果ててしまいたいという欲求が混ざり合う。目尻に涙を溜め、懇願するような瞳でダンテを見れば、どうしてほしいのかと意地悪く耳元で囁かれる。
 それに答えようとすれば唇で塞がれ、舌で口内を犯される。何度も舌を絡められ、器用に口外に連れ出された舌は次にダンテの唇に吸われる。じゅるじゅるとわざとらしく音を立てながら吸い上げれば、限界に達したダイナの身体が一瞬強張った後、だらりと全身がベッドに委ねられた。
「二回目……だな」
「んっ……ぅ……たえ、られな……」
 肩で息をするダイナの膣にはいまだ衰えを見せないそれが入っている。こうなると完全になすがまま。動かれる度に感度は上がり、絶頂へと導かれる。ダンテの欲を受け止める頃には乱れに乱れた後だ。
 ごくんと生唾を飲み込み、息を整えているダイナを見てダンテは笑みを浮かべる。
「ひあっあぁ、ん! な、に……」
 繋がっているまま身体を引き起こされ、急な快感に喘いでしまう。それに起こされるのはいいものの座っていることすらままならないため、ダンテにもたれかかるしかない。結果、根元まで咥えこむ形になってしまう。
「今日はちょっと激しくしすぎたからな。少し休憩だ」
「ほん、と……?」
 いつもと変わらない責めだったような気もするが、こうして休憩を入れてくれたのは初めてかもしれない。普段とは違うダンテの行動を怪しいとも思ったが、今は素直に休ませてもらおうと身体を預ける。
「良かったら飲むか?」
 サイドテーブルに置かれていた飲み物をダイナに手渡せば、ありがとうと言ってゆっくりと飲んでいく。大分と喉が渇いていたのか、容器から口を外せば中身はもう残っていなかった。
「これ……何……?」
 水でなければお茶やジュースといった類のものでもない。無味無臭な液体に心当たりのない彼女は、飲んだ後に確認を取った。
「何かと聞かれたら……そうだな。今から直接聞くのが手っ取り早い」
 ダンテの不穏な言い回しに、なんとなく察しがついたダイナは慌てる……が、もう遅い。喉を潤すことが第一だったとはいえ、中身をよく確認もしないで飲んだのは間違いなくダイナの失態だ。
「休憩も十分取った。……第二ラウンドと行こうか」
 離れられないようにぴったりと抱き寄せてから腰を振れば、ダイナは抵抗なく受け入れた。……いや、抵抗しようという考えにすら至らなかったのかもしれない。
 何故なら……。
「ひあぁ! な……に、これぇ……! しゅご、いぃ……!」
 先ほどまでのは何だったのだろうかと思うほどの強烈な快感が身体を走る。脳が酸素を求めて口で呼吸しようと試みるが、一度開いてしまった口は甘美な声を吐き出すことしか出来ない。それだけにとどまらず、休憩したばかりだというのに快楽の波がすぐそこにまで差し迫ってきていた。
「あっ、あ……んぁ、あ! ふぁっ、あぁ……っ!」
「そんなに気持ちいいか?」
「ぅあっ、あ、ひっ……! く、る……あっ、ああっ、ああぁ!」
 あまりの気持ちよさに身体が大きく仰け反り、返事も出来ないままに絶頂を迎える。だらしなく開いた口からは舌が見え隠れし、高揚しきった表情はまだ一度もイッていないダンテを誘惑しているようだ。
 先ほどの不思議な薬の力だとダンテは分かってはいるが、それでもこれほどまでに乱れるダイナを見てしまえば、もっと見たいと考えるのは自然なことなのだろう。返事がなかったことを“イッていない”と意地悪な解釈をし、何もなかったように腰を振る。
「はっぁ、あ、んん! とまっ……あっ、あああぁ! お、く……はぁ、あ、イ……ッ!」
 弱いところばかりを的確に擦られ、これだけでも果ててしまうというのに、それでは済まないほどの快楽が次から次へと押し寄せてくる。この状況に追い打ちをかけるように、停止の言葉すら紡がせてもらえない。
「はぁっ、はぁ──……あ、はぁ、あ……はぁっ……あっ……あ──んあぁあ!」
「虜に、なっちまってる……なっ」
 ピストン運動するダンテも息が上がり、時折荒い息を吐く。その艶めかしさを前に、知らずのうちにダイナの気分も最高潮へと達する。
「ああああぁっ! あっ! あんっ! はぁ……はぁ……あっ、あっ……!」
「ダイナ……いい、か?」
「い、いぃ……んん! んっ、はっ! ま、たぁぁ……!」
 いいよの一言すらうまく言えないダイナは、イキすぎて痙攣する両足を必死に動かし、ダンテの背中に回そうとしている。ただその前に再び絶頂したためにうまくいかない。
 それでも気持ちを伝えるために一生懸命足を絡めようとするダイナが愛おしくて、思い切り突き上げた後に自分のそれが逃げ出さないよう全てを吐き出せば、ダイナのあそこも逃がさないようにと強く締め付け、ともに果てるのだった。
 あの後、流石にやりすぎだとダンテは怒られたが、またあんなダイナの姿を見たいという考えに至ったのか、懲りもせずにあの手この手でダイナをいじめ抜いたとか抜かなかったとか……。