堕ちた天使

「……ここ、は……」

 意識がはっきりとしない頭をゆっくりと動かしながら、辺りを見渡す。
 視界に入ったものは、十字架に縛られて身動きが取れなくされている手足と、目の前の玉座に鎮座している一人の男だった。

「ようやくお目覚めと言ったところかな。天界の長、ラクア」

「……魔王……」

 少しずつ、頭が冴えていく。それとともに先ほどまでに何があったのかも思い出された。
 戦争の末、私たち天界は負けたのだ。そして自分は今、人質として捕まっているということを。

「魔王ではなく赤司征十郎と、呼んでもらいたいものだね。君とてどういう状況かはもうわかっているだろう? 長である君が捕らえられた以上、もう降伏する以外の余地はないことぐらいは、ね」

 嬉しそうに口角を上げ、含みのある言い方をしてくる。
 私はそんな態度の魔王を見て不快になりながらも、悟られないように顔の筋肉をできるだけ動かさないように、細心の注意を払いながら、言葉を口にした。

「私は降伏などしないわ。殺したいなら早く殺しなさい。それとも魔界の長らしく、民たちの前で私のことを晒し者にでもしながら嬲り殺すのかしら。さぞや魔界の者たちは歓喜の声を上げ、喜びに打ち震えることでしょう」

 出来る限りの煽りと挑発、そして私自身が死を恐れてはいないことを分からせるために、必要以上の言葉を並べた。
 これで相手が頭に血を上らせ迂闊な行動を取ればそのまま返り討ちに、もし見抜いて警戒心を強めたとすれば、それはそれで気疲れするのが早まる。結果として私が逃げ出す一瞬の隙を作ることが出来る。そういったことを考えていたら、魔王は口を開いた。

「……そんなに言葉を並べるのは、君らしくないな」

「え……んん!? 何を……!?」

 私らしくないと、まるで普段の私のことを知っているようなことをいいながら、玉座から立ち上がって近づいてきたと思ったら、“何か”をされた。
 突然のことに私は、ほんの少しだけ開いた口を閉じることも忘れ、ただ魔王を見つめる事しか出来なかった。

「敵方を捕虜にするということは、戦場で相手の首を切り落とす以上にリスクが伴うこと。それぐらい、君でも分かっているはずだ。では何故、僕はそんなリスクを冒してまで君を捕らえた?」

「それは、私が天界の長だからでしょう……? 相手方の長を落としたとなれば、これ以上の士気上げは……、…………士気を上げるため“だけ”に、捕虜にする……?」

 自分の考えを口にすればするほど、それは違和感の塊で……、私は自分の考えに自信がなくなり、言葉を繋げられなくなった。

「そうだ。士気上げのためだけならば、君の首を持ち帰るだけで事足りる。それに戦争の状態としても、ほぼそちら側の負けは決まっていた。そこまでしなくても我々の勝利は揺るがなかっただろう」

 悔しいが、魔王の言っていることに嘘偽りはない。事実、天界は魔界の猛攻を防げるほどの力も、士気も低下しきっていた。
 そうなった理由は紛れもなく、私が弱かったから……。そして挙句の果てに私はこうして魔王に捕まり、何かに使われようとしている。

「本当の目的は何? 先ほど私に“何か”したことと関係あるのでしょう?」

 私がそう言うと魔王は嬉しそうに笑みを浮かべたかと思うと突然、キッと鋭い眼光を私に向けた。いきなりのことだったせいで、私はその瞳を視界に入れてしまった。

「あっ……! ぐっ……」

 大げさなぐらいに顔を逸らし、目を瞑り、魔王の瞳から逃れた。嫌なことだが、とても大事なことを思い出した。……私はあの瞳に負けた。戦っている最中、黄色と赤のオッドアイを視界に入れてから体が委縮し思うように動かせず、結果として捕虜となってしまった。

「(体の自由が少し……奪われた気がする。縛られているから関係ないけれど……)」

 しかし、何かしらの拍子に逃げられる機会が在った時に体が動きませんでは話にならない。出来るだけ相手の足元を見て、動きを予測しなくては……。

「この僕から目を逸らそうなんて、随分と躾がなってないね」

「あっ……いや! 触らないでっ! うっ……あぁぁ……」

 足元ばかりを見ていたせいで手の動きに対応できず、私は顎を掴まれ無理やり瞳を合わせられた。とっさに頭を振って顎の束縛を開放し目を閉じたものの、また少し、力が抜けていく感覚に襲われた。

「目を合わせろ」

 低い声で短く発せられた命令に私の身体は反応し、自分の意志に反して目を開き、魔王の瞳を食い入るように見つめてしまう。

「あっ……あぁ……はっ……(身体が……いうことをきかないっ!)」

 私の身体は力をすべて抜かれ、皮肉にも縛られているおかげで倒れこまずに済んでいる状態にまで追い込まれた。

「そうだ、それでいい。君は僕には逆らえない。絶対にだ」

 そう言い放った魔王は私を縛り上げている縄を全部取り払った。力の抜けた私は逃げ出せるわけもなく、意識を保つことが精いっぱいで、嫌でも魔王にもたれかからざるを得なかった。

「くぅ……悪魔に、触られるなんて……っ」

「心配することは何もない。すぐに僕に触ってもらいたくて仕方がない身体に躾けるからね」

「いい加減にしてっ! 私は絶対、貴方たち悪魔に媚びへつらうことはないわっ……!」

 何が目的なのかが分からず、この時の私は焦っていた。しかし、この時に目的を知っていたとしても私はこの男……、赤司征十郎から逃れることは―――不可能だっただろう。

 身体に力の入らないラクアは赤司に抱きかかえられ、場所を移された。どうやら移動した先は寝室の様で、大きなベッドがひとつ置いてあり、赤司はそこにめがけて持ち上げていたラクアを投げた。

「うっ……、何をする気……?」

 いくら柔らかい素材であるとはいえ、ある程度の高さから落ちれば多少の衝撃は受けるし、力が抜けている身体ではまともに受け身も取れないため、うめき声を上げる。

「そういう言葉を口にするということは、何かされることを望んでいるのかな。いいだろう、僕が叶えてあげよう。……ただし、嫌と懇願してもやめないことは今のうちに断っておくよ」

 赤司は言い終わらないうちに上着を脱ぎながらベッドの上で横たわるラクアに乗りかかる。

「気安く私に……きゃぁぁ! な、何で裸……!?」

 ベッドに投げられた痛みに悶えていたラクアは、上に乗りかかられたのでそれを振り払おうと抵抗するときにようやく赤司が上着を脱いでいることに気づき、驚きとともに初めて見る異性の素肌に顔を赤らめる。

「素肌ぐらいでそこまで驚かなくても……、それすらも初めてなのか?」

「い、異性の素肌なんて……そんな、汚らわしい……っ。あっ……」

 必死に顔を逸らして赤司を見ないようにしていると不意に頭を撫でられ、素の声を上げてしまう。

「…………」

「やっ、撫でないで……。ん……、うぅ……」

 何も言われることなく、ただ頭を撫でられる。異性に触れられること自体が初めてのラクアにとっては全てが未知のことのせいで、優しく撫でられるだけで自然と甘い声が漏れだす。

「頭を撫でられるのが好きか?」

「初めてだから……、んん、わから、なっ……」

「そうか。(少し効き目が強かったか? まあ、効いていないよりはいい。むしろ、嬉しい誤算だ)」

 先ほどこの部屋に連れてくる前に施した呪術の効き目には、赤司自身も少し驚いていた。しかし、これから始まる夜の宴の前にはその程度の出来事は些細なことに過ぎない。

「んぅ……、っ……。(殺さず恥辱する、これが卑劣な悪魔たちのやり方……。それでも私にはもう、耐えるしか選択肢は残っていない……)」

 力の入りづらい指を動かしてシーツを掴み、身体に流れる感覚に耐え、唇をきつく結び声を殺す。出来るだけ赤司を悦ばせまいとして……。

「声を殺して少しでも抵抗しようとしているみたいだが、無駄だよ」

「ふぁぁ!? やっ……! んぁぁっ、あぁ……はぁっ……」

 頭部への優しい感覚だった所に突然、胸の一番敏感なところを触られ、最初はびっくりしたような声を上げてしまう。だが慣れてくるとだんだんと心地よいものへと変わり、自分の意志とは裏腹に、身体が赤司の指を求めだしていた。

「まっ……てぇ……! あぁっ! こ、わっ……い……!」

 男に身体を触られたことのないラクアにとって、赤司に与えられること全てが未知の領域。胸を触られているのに、別のところが我慢できないような感覚に戸惑い、自身でも信じられないほど簡単に、敵である赤司に助けを求めてしまった。

「ほう……。プライドはかなり高い方だと踏んでいたから、そう言った弱気な発言が胸を触った程度で聞けるとは思っていなかった」

 ラクアの口から怖いという言葉をきけて満足したのか、赤司は手の動きを緩める。

「んあっ、はっ……(何も、言い返せない……。私が未熟だからこそ起こった事態に対して、敵に助けを乞うなんて……、長として失格、ね)」

 赤司の攻め手が緩んだことで我慢できない感覚が引き、ラクアは少し余裕が出来たのでそんなことを考えていた。

「……感心しないな。余裕が出来たら別のことを考えるその態度。……なら、躾が必要だ。僕以外のことを考えられないように、ね」

「さっきから何を言ってっ……!? いやぁぁ! 服が……!」

 これまでの会話に中で、赤司は奇妙な言い回しばかりをしている。最初は恥辱するためだけの煽り文句だと捉えていた。そして、行為が終わった後は死を待つだけだと……。
 しかし、今の言葉は明らかに違う。まるで自分のものにするかのような言い方だ。まともに考えることのできない頭を必死に働かせ、赤司の言葉の真意を探っていたが、服を破られ裸になった自分の姿に動揺し、それどころではなくなってしまった。

「悲鳴もなかなかそそるものがあるな。だが、僕が一番聞きたい声は何か、分かるだろう?」

「くぅっ……! 分からないし、分かりたくもっ……あっ、そこはっ、いけないっ……!」

 恥ずかしさと悔しさで唇を噛みしめる。だが赤司の手が、自身の我慢できない感覚を起こしていた所……、秘部に躊躇いなくあてがわれた時には、情けなくも否定の声を上げる事しか出来なかった。

「言っただろう、躾けると。僕のこと以外を考えた罰だ。さぁ、僕から与えられる快感に悶え、イキ狂う姿を見せてもらうよ」

 そう言って赤司は手慣れた様子でラクアの大切な部分の割れ目に躊躇いなく、中指を一気に入れ込んだ。

「はっっ! あ、うっ……、あぁっ、んぁ……あん、あぁ……」

 入れた瞬間こそは初めての圧迫感に、息を吸ったのか吐いたのか分からないような空気の塊の音が喉奥からあふれ出た。しかしラクアのアソコは初めてとは思えないほど濡れていて、まるで欲していたと言わんばかりに赤司の指を咥えこみ、少し指を動かせばグチュグチュといやらしい音と喘ぎ声を部屋に響かせた。

「こんなに僕の指を嬉しそうに咥えておきながら、嫌だと嘘をついていた口にも罰を与えようか」

 ぐっと赤司が前のめりになった影響で、指がさらに奥へと入り込む。中に入れ込まれる快感にラクアはまた声を出し、身をよじった。

「あぁぁっ! な、にか……来るっ! はっ、ダメ……耐えられっ……んあぁぁぁぁぁ!」

 自分でも驚くほどの、快楽に溺れ切った声が出た。全身をびくびくと震わせる中、腰だけが別の生き物になったようにガクガク揺れている。顔は恍惚とし、肩で息をする。

「敏感だな……。唇を奪いながら初めての絶頂を迎えられる様にしてあげようと思っていたんだが……、なんて、この言葉も今のラクアの耳には入っていかないか」

「はぁ―――。はぁ―――」

 少し予定が狂ってしまったが大した問題ではないといった感じで、赤司は果てたラクアを見て、まるで自分のものになったと確信したように口角を上げた。そして休ませる気はないと言わんばかりにまた膣内に入っている指をぐりぐり動かし、ラクアに絶えず快感を与えだした。

「ひぁぁ、ん、あ、ふぅ、ぅっん! んく、ふぁ、んんっぅん……、んはぁあん、ぁあ!」

 ラクアは言葉という言葉すら口から紡ぐことが出来ないほど、赤司に与えられる快楽に溺れていた。もうここに天界を統べていた長の姿は、ない。

「ふぁ、ぁっあっ、あっ、ああっ! ま、たっ……! んひっ……んくぅぅ!」

 一度イッた身体はさらに過敏になっていて、弄られて数分も経たないうちにまた絶頂へと導かれる。

「そうだ、ラクアはそれでいい。無理に僕を煽ろうとする姿は似合わない」

 一生懸命酸素を取り込み、息を整える姿のラクアを見て赤司は満足そうに笑みを浮かべている。

「どう……し、て……」

「何か、言いたいことがあるようだね」

 ずっと喘ぐ事しか出来なかったラクアが、必死に言葉を並べようとしていることに気づき、赤司は指の動きを止める。それを機に、ラクアは疑問に思っていたことをぶつけた。

「普段の私を知っているような……、その口ぶりは何……? それに恥辱した後、私をどうする気なの……?」

 素直な疑問だった。問いかけをするラクアの瞳には逃げ出そうとする気配も、刺し違えようとする気迫も感じられないことを悟った赤司は、丁寧に質問への返答をした。

「ラクアはいつも王宮よりも自室で静かな時間を過ごすのが好きなようだったからね。そのおかげで色々と、私生活を垣間見ることが出来たよ」

 赤司がさも当然のように答える内容に、血の気が引いていくのが分かった。つまり、知らないうちに自分の生活を覗かれていたということだ。

「それじゃぁ、私の素肌も見慣れているのね。恥ずかしい思いをしたのは私だけ、ね」

 瞳を伏せながら、自傷気味にそう言い放った。答えを貰ったはいいが、結局それに対してどう返していいのか分からなかった。

「勘違いしているようだから訂正しておこう。ラクアの肌を見たのは今日が初めてだよ。僕がいつも見ていたのは読書をしながらたまに寝てしまいそうになる姿と、一国の長であるにも関わらず、ほとんど発言しない所ぐらいだ」

「そ、それはっ……」

 指摘された内容に、ラクアは言いようのない恥ずかしさを感じた。ただその恥ずかしさは先ほどまで与えられていた物とは違い、ほんのり甘さも含まれていた。

「発言しない理由も分かっている。自分の言葉の重みを知っているからだ。責任感が人一倍強いラクアは出来るだけ言葉を控え、己の力のみで解決してきた。まぁ、その結果が今の事態を招いているわけでもあるが……」

「どうしてそこまで、私のことっ……!」

 今まで誰にも分かられたことのないラクアの真意。王宮内で言葉を発しないラクアは恐怖の対象としてしか見られておらず、自分もそれでいいとしてきた。

「それくらい、態度を見ていればすぐわかる。ラクアが今までに少し、周りの人物に恵まれていないだけだ」

 ドキドキと心臓の音が赤司に聞こえてしまうのではないかと思うほど、うるさく波打った。どれだけ割り切って感情を殺しても、やはり分かってもらえるというのはこの上なく嬉しいことだった。その相手が例え、誰であろうと……。

「フッ……。気分もさらに高まったところで、続きといこうか」

「ふぁ、んんっ。耳、はぁ……」

 耳元で優しく囁かれ、ラクアは完全に蕩け、赤司に身を委ねた。

「安心して、僕の前で何度でも気持ちよくなってくれ。これが終わったらラクアを正式に僕の妻として迎え入れるからね」

 そう言い終わると今度は膣内の指を抜き差ししだした。

「あぁぁん! な、あんっ、いまぁ……ひぁぁ、なん、てぇ……!?」

 衝撃の言葉に目を見開き、必死に言葉を飲み込もうとするが、赤司の容赦ないピストン運動の前にまた、気持ちいいと言わんばかりに甘い声が口からあふれ出る。

「ラクアを監視していたのは、最初は偵察が目的だった。発言をしないのに一国を動かしていると耳にしたからね、その手腕が気になった。だが蓋を開ければさっき言ったとおり、自身を押し殺して民を守る女がいた。そして気づけば僕は、そんな君から目を離せなくなっていた」

「そんなあぁぁ……ひぅ、あぁ、ん、ぅっぁぁ、はぁ、くぁっ」

 赤司の言葉を聞いて、ラクアの顔は今日一番に赤くなり、気分は最高潮に達していた。この機を逃すまいと赤司は指をさらに激しく動かし、ラクアを快楽の波へと連れていく。

「あぁぁ、はぁっああ、ま、たぁぁぁ、く、ぁ、ぁぁぁ! ふぁ!? んっ……」

 またイかされると覚悟を決めた時、赤司の指は引き抜かれた。イけなかった身体は疼き、アソコはいやらしく蜜を垂らしながらヒクついている。そんな自分の身体の変化にラクアはまた恥ずかしさに晒され、力なく顔を左右に振り、そんなことはないと自分に言い聞かせた。

「そろそろ、挿入れようか」

 短くそう言い放つ赤司の言葉の意味が分からず、虚ろな目で赤司の姿を見る。そこには自分と同じように全裸になっているのが目に入った。

「あっ! やっ、それっ……!」

 初めて見る男性器を前に、顔はゆでだこの様に赤くなるが好奇心には勝てず、ちらちらと横目で追ってしまう。

「まぁ、素肌程度でもあそこまで動揺するラクアだ。その反応を期待していたよ」

 どこか嬉しそうに言い、赤司は躊躇いなく亀頭を秘部の割れ目にあてがった。

「あっ、つ……ふぁ……」

 焦らされた後のため、何かが触れるだけで声を上げる。

「ラクア、僕の妻になる覚悟はいいかい?」

「んはぁぁ、擦られたらぁぁ、まと、もに……あぁ、こたえ、られ、あん、あんっ」

「もっとも、ラクアに否定権はない。…………、絶対は僕だ」

 耳元で言い、一気に奥まで貫いた。

「うっっ! くぁ、はぁぁぁ!」

 指とは比べられないほどの圧迫感。身体を鍛えているラクアだからこそ悲鳴はあげないものの、苦しそうに顔を歪めた。

「流石に初めては……、きつ、い……な」

「はっ、ぐぅ、ぁ……。はぁ……はぁ……」

 あまりの衝撃にラクアは息を整える事しか出来ず、赤司にすべてを託すしかなかった。

「僕に委ねていいのか? それじゃぁ遠慮なく……」

「んっ、ふぁ! んちゅっ、あぁ……んふぅ、んぅ、んぅぅ、ぷぁっ……」

 初めて唇同士を合わせる。そして舌を奪われ、舐め回される。一気にたくさんの初めてを奪われていく。

「そんな蕩けた顔をして……、キスがそんなに気持ちよかったかな?」

 赤司の言葉が恥ずかしくて抵抗しようと首を左右にふろうとしたとき、バッチリと目が合った。今の瞳は最初の威圧的なものではなく、純粋に尋ねられたように感じ、小さく首を縦に振った。

「そうか、じゃあキスをしながらゆっくり腰を動かしてあげよう」

「んんっ……。ん、んぅぅっぅ、んふっぅぅ、あふっ! んあぁぁ!」

 キスをされ、口を塞がれているせいでうまく声を逃がせない。ただはっきりと分かることは、あまりの気持ちよさにどうにかなってしまいそうだということだった。

「んひっ! んっ、んん! んぁ、んあぁぁぁぁ!」

「ん、くっ、もうイッたのか、すごい締め付けだ」

 膣の激しい収縮を感じ、息がしやすいように唇を離す。

「はっ! はっ! はぁ……! ふっ、ふぅ……ふぅー」

 細かく呼吸を刻み、新鮮な空気を取り込む。
 ラクアは驚いていた。ほんの少し、自分を知ってもらうだけで、ここまで自然と身体を任せられるものなのだろうかと。自分が実は淫らなだけだったのか、それとも赤司という男がそれほどに魅力的だったのか。今のラクアにそれを知るすべはない。
 それでも今、この繋がりは嫌なものではなく、心地いいものと捉えられる程度には心が変化しているのは間違いなかった。

「息は整ったようだね。それじゃ、動くよ」

「あ、まって! ぅあ、はぁ……あぁんっくぅ、ひぁぁ……」

 ラクアの静止を聞かず、赤司は腰を動かした。最初は優しく抜き差しをし、ゆっくりと奥を小突くように小刻みに変えていく。

「んはぁ、あぅぅっ、き、聞きたい、あぁっ……こと、ひぅぅ!」

 どうしても確認したいことがあって必死に言葉を並べようとするが、赤司の攻めの前に喘ぎ声ばかりが大きくなる。

「聞きたいこと? っ……言ってごらん」

 赤司は多少顔をしかめたりはするものの、声を荒げたりせず、淡々と促す。

「わ、た……あぁっ! んぁぁ、うぅんっくぁ……ほん、と……にぃぃ、んぁっはぁ、ぅぁぁ……お嫁……はぁぅ、さんにぃ……、あっあっ! あぁぁぁ!」

 言い終わらないうちにまた絶頂する。しかし赤司は腰を止めず、代わりにラクアの問いに答えた。

「あぁ、心配することは何もない。僕と結婚してくれるね?」

「はっぅぁ! うぐ……んあぁぁ、う……ぁ……はいっ、はいっ……!」

 コクコクと赤司の問いに激しく首を縦に振り、力の入らない腕を必死に赤司の背中に回した。その姿を愛おしく感じた赤司はさらに激しく動いた。

「あぁぁぁ! うあぁ、と……とまらないぃぃっんあぁぁぁ!」

この後どうなったか記憶に残らないほど、ラクアは赤司と交わった。意識を手放した後のラクアは、生まれて初めて幸せな顔色で眠ったという……。