「私の方は準備いいわ!」
「……うん、ボクの方もいいよ」
「それじゃ……いざ、ポケモン……」
「「バトル!」」
今後の旅を大きく左右する大事なポケモンバトル。
私の初戦とは言え、絶対に負けられない!
「私は勿論、チルットよ!頼むわよ、チルット!」
「チルルッ!」
気合十分って様子ね!相手は一体何を使ってくるか……。
「いけっ、アーマルド!」
「ア、アーマルド……?見たことのないポケモンだ……」
何タイプなのかも見当つかないんだけど……。
水っぽい気もするし、固い鎧のようなものを見るからに岩タイプの可能性も捨てきれない。岩タイプだったらチルットは圧倒的に不利。
どうする……どうすればいい?
「様子見といったところかい?それならこちらから仕掛けさせてもらうよ。アーマルド、みずでっぽうだ」
「チルット、避けて!」
「チルッ、チルーッ!?」
「えぇ!みずでっぽうじゃないの!?」
ちょっと、間一髪でなんとかチルットが避けたからよかったけど、今の発射速度とか威力とか、みずでっぽうっていうよりバブルこうせんと言っても過言じゃないぐらいの威力だったんだけど!?
しかし、これで相手は水ポケモンと仮定してよさそうね。
「アーマルドでは素早く動くポケモンをとらえるのは少し大変だな。どうしたものか……」
悠長にそんなこと言って、顎に手を当てて悩んでる仕草取ってるけど、明らかにピンチなのはこっちなんですけど!って、私がしっかりしなくちゃ、チルットも動揺しちゃう。
……とにかく、こうなったら攻撃あるのみ!
「チルット、おどろかすよ!」
「チルチルチル、チルーッ!」
「……キシュ?」
「全然効いてないって顔してる……」
というか、効果いまひとつって感じだったんだけど……。もしかして、水・岩タイプとか……?
「今だ、アーマルド。うちおとせ!」
「チルルーッ!」
「あぁ、チルット!」
おどろかすために近寄ったのが仇になった!それにうちおとすって確か岩タイプ……チルットに効果抜群じゃない!
「チルゥ……」
「チルット、しっかり!」
「それ以上は戦えそうにないね。……うん、やっぱりボクが一番強くてすごいんだよね」
「くぅ……チルット、よくやってくれたね、ありがとう」
…………初めてのポケモンバトルに、負けた……。悔しい、な。
それに全然チルットの力を引き出してあげられなかった。
「初戦としてはかなり冷静だったね。海杏はきっと良いトレーナーになれるよ。ボクが保証する。……さて、約束通り、これからはボクも一緒に旅についていかせてもらうね」
いつまでも引きずってちゃダメだ、切り替えないと。
「ダイゴさん、本当に強いのね。今の私ではまだまだ手も足も出ないや。……これからの旅で、私のトレーナーとしての腕を見てもらえるとその、うん……」
負けるつもりは毛頭なかったけど、一緒に旅をしてくれる人がいてくれるっていうのは純粋に心強いというか、嬉しいというか……。
「もちろん。婚約者としても、先輩トレーナーとしても、色々と手取り足取り教えてあげるよ」
あれ?なんかすごいことをさらっと言われたような……。
というか私、何か大事なことを忘れている気が……
「ねぇダイゴさん、一緒に旅をするっていうのはその、つまり……?」
「うん。ボクは海杏の婚約者だからね。好かれるように色々アプローチもかけさせてもらうよ」
「はぁ…………はぁぁ!?ま、待って!そんなこと急に言われても……!」
嘘でしょ……?え、えぇ?どうしてこういう話の流れになったの!?
「バトルする前に言ったよね。海杏のこと、いいと思うって」
「う、うん……。それは覚えてるけど……」
「あぁそうか、きちんと言葉にしないといけないよね」
「言葉にする?」
なんか、不穏な空気が……
「ボクは海杏のことが好きだ。結婚を前提にボクと一緒に旅をしてくれないかな」
…………えぇぇぇぇぇぇぇ!?な、なんで、どうして!?
「わ、私のどこがいいの!?」
「そうだね。ポケモンへの情熱は素敵だし、トレーナーとしてのこれからの上達も楽しみだし、一人で旅に出る行動力も魅力的だし……」
「ス、ストップストップ!それ以上は恥ずかしいからもういいよ!」
なんでそんな恥ずかしいことがすらすらと言えるのかな!?聞いてるこっちが火を噴きそうだよ!
「ははは。顔を赤らめているところも可愛いよ」
「~~~~っ!も、もうからかうのも大概にしてってば!早くチルットをポケモンセンターで回復させて、ニビジムへ挑戦するんだから!」
こうして私はダイゴさんと共に、時にはトレーナーとして厳しく指導をされ、時には婚約者として優しくされる旅が始まった――――。