Scatter in the wind blows

 貴方は同じ空のもと、交わした夢を覚えていますか?
 幼き日、身も心も傷ついた貴方は唯一の肉親すら置いて、たった一人であてもなく荒野を歩いていましたね。その時の貴方はまるで蒼き獅子の如く、私は導きの陽光のように感じました。迷える者たちの目を醒まさせ、希望になれる人だと。
 そんな貴方をこの躰が朽ち果て、吹く風に散っても見届けたいと思いました。
 しかし、私は大きな勘違いをしていました。
 貴方も傷ついた一人で、巡りゆく季節の中で悲しみを薄れさせ、優しく包み込まれるべき人であったというのに、それに気づくことが出来ませんでした。
 そのことに気づけぬまま、私は貴方と共に道の果てに辿り着きました。普段から無口で、何も語ってくれない貴方はこの日だけ、夢を語ってくれました。
「俺は魔界へ通ずる道を開き、そして力を手に入れる」
 この時に初めて、私は貴方の心に触れました。そして、その道が過ったものであることにも、気づきました。しかし、私には止めるほどの強さも、ついていく覚悟もありませんでした。
 ですから、同じ空のもと、夢を交わした日に、私たちは別々の道を歩み始めました。
 あれから、巡りゆく季節を那由他数えたことでしょう。
 私はこの穢れなき翼で星空の海を渡りながら、たとえ命が失われ暗闇を彷徨うことになっても。この躰朽ち果て、吹く風に散ることになっても――
 輪廻の果てまで、貴方を見守り続けております。