Legend of the Creation

 三本の“始まりの剣”(Sword of Genesis)が創りし世界──ラクシア。
 ルミエル、イグニス、カルディアと呼ばれる三本の剣は誰の手によって作られ、どこから現れたのかを知るものは存在しない。ただ、剣は自身の所有者を求め、荒野だった世界に生命をばら撒いたとだけ伝えられている。
 ──産めよ、増やせよ、地に満ちよ。
 世界に動植物が生まれた。しかし、それらはどれだけ大きく成長しようとも“始まりの剣”に気付くことは無く、扱うことはなかった。何故なら、生きるための本能しか持っていなかったから。
 次に“始まりの剣”は魂をばら撒いた。魂を得た生き物に心が生まれるようにした。こうして魂を得た初めての生命体、人間が生まれた。人間は心を持ったことで思考するようになった。
 人間が生まれてからどれほど経ったか。ひとりの人間が第一の剣、ルミエルの存在に気付き、手にした。所有者に巡り逢えたルミエルはその者に力を与えた。
 ──天を動かし、地を広げ、海を躍らせる絶大な力。
 その者は他の人間を遥かに凌ぐ存在になった。他の人間はその者を尊敬し、畏怖し、剣に選ばれし者として崇めた。ルミエルの剣を持つ者を始祖神ライフォスと呼び、その他の人間を小さき人々と呼んだ。
 ライフォスは剣から得た力を世界をよりよくするために使った。また、たくさんの仲間に第一の剣ルミエルを貸し与え、力を分け、協力した。ライフォスが望んだ調和だった。
 こうしてライフォス以外にもたくさんの神々が誕生した。他の神々の影響を受け、エルフやドワーフなどの亜人種が生まれたがどの神も、どの種族もいがみ合うことはなく、調和を保ち、世界は豊かになった。
 しばらくして、別の人間が第二の剣イグニスを手にした。強大な力を得たこの者は好戦的で利己的だったので、自分のためだけに力を使った。
 自らを戦神ダルクレムと名乗り、始祖神ライフォスの勢力と戦うための軍団を作るため、様々な実験を行った。結果、魂を穢れさせることで生き物を変容させ、生き物が持つ全ての力を解放出来ることを知った。この手法で怪物のような種族を次々に生み出し、凶悪な軍団を作り上げた。そして、ライフォスに戦いを挑んだ。
 ──神々の戦争。
 最初はダルクレムの圧倒的勝利であった。しかし、ダルクレムの部下も利己的であった。自身が一番になることを望み、第二の剣イグニスを盗んだ。
 数々の部下が剣に触れ、新たな荒ぶる神がたくさん誕生した。そして、統率が取れなくなった。
 これを好機としたライフォスたちは反撃するものの、新たな荒ぶる神々は簡単に打倒しえるものではなかった。“始まりの剣”の力は互角であったため、壮絶な戦いは終息を迎えるどころか混乱し、長引いた。
 長い膠着状態の中、双方は更なる力を求め、第三の剣カルディアを手に入れようとした。第三の剣カルディアは自身を戦いに使われることを良しとしなかった。だから自ら砕けるという選択を取った。
 第三の剣カルディアは魔力の結晶となって世界中に散らばった。結果、両陣営は戦いの決着をつけられなくなった。また、長く混乱した戦いの中で第一の剣ルミエルと第二の剣イグニスも行方不明となり、なし崩しに休戦状態へと移行した。
 そして神々は傷を癒すため、長い眠りについた……。

 こうして世界には小さき人々だけが取り残された。
 神々と共に築いた文明は戦いの中で失われ、小さき人々だけの新たな時代が幕を開ける。だが、この時代も平和ではなかった。
 調和を求めた第一の剣系統の神々に従った者たち──人族──と、解放を求めた第二の剣系統の神々に力を与えられた者たち──蛮族──は終わりなき戦いを続けている。
 数百年という長い時の間に双方は文化を興し、戦い、衰退し、また生まれ……。
 そして現在。世界は第四の文明期に入ろうとしていた。この時代の行く末を知る者はまだ誰もいない。
 たとえ神であったとしても、未来を知ることは出来はしないのだ。