Encounter with round pink

光の珠を目指す道すがら、初代は自分が先ほどまでどういった状態だったのかをマリオから聞いた。
この世界はキーラ──光の珠のこと──という存在の手に落ちたこと。キーラと戦うために集まった反抗勢力はファイターと呼ばれ、総勢74名から出来ていること。その他の広大な宇宙に広がるありとあらゆる世界の人、動物、ものなど、生きている存在は全て身体を奪われスピリットとなってしまったことなど、必要なことをかいつまんで話してくれた。
「俺もスピリットってやつなんだな」
先ほどの身体の自由が利かず、誰かに使われていたような感覚を思い出す。苛立ちはあったがマリオが悪いわけではないので、胸の内に仕舞いこんだ。
スピリットになってしまったものたちはキーラの支配下に置かれ、捕まったファイターから作られているボディを操るために利用されていると聞き、早く仲間を救い出さなくてはと決意を新たにする。
しかし、問題もある。操られているスピリットたちが力を貸しているため、どれも傀儡であることに変わりはないのに異常な強さを持っている傀儡や、本来持っていない力を発揮する傀儡もいるそうで、スピリットを解放するのも一筋縄ではいかないとマリオは苦労を語った。
同時に、スピリットを解放出来れば元の世界に帰還させてあげることも、自分たちがスピリットたちから力を貸してもらえることも出来るので、積極的に解放していきたいとも語ってくれた。
他のスピリットたちとは違い、何故か初代だけは肉体まで取り戻したが、スピリットという枠に変わりはないらしく、ファイターたちに力を貸し与えることは出来ても、自らが傀儡と戦うことは出来なかった。
歯がゆくはあったが、この世界の摂理だというのだからどうしようもない。初代に出来るのはファイターであるマリオに力を貸し与えることまでだ。
自分の状況をある程度把握した初代と、説明を終えたマリオたちは十字路の台座に辿り着く。南の方からやってきたので残りは北、西、東の道ということになる。どこから進むかと相談する前に視界へ飛び込んできたのは、十字路のど真ん中で丸いピンクのポヨポヨしてそうな生き物。
「あのまんまるピンクはなんだ。敵か?」
力を貸すために武器を構えた初代をマリオは止め、彼は星の戦士カービィであると教えてくれた。
彼もファイターの一人であり、全滅しかけたファイターの中で唯一生き残った一人でもあったという。実のところ、マリオ自身も初代を助ける幾分か前にカービィによってキーラの支配から救われたばかりだったそうだ。次に戦った傀儡から解放したのが初代で、他のスピリットとは違う反応を示したためマリオがその場に残り、カービィが一足先に偵察をしに行っていたとのことだった。
話し声が聞こえたのか、カービィがこちらに走り寄ってきた。どうやら分岐する道を一人では選べないとして、どうするか迷っていたらしい。分岐先にはそれぞれファイターが捕まっており、誰から助けるかをファイターの二人は話し合いを始めた。
初代としてはファイターたちのことよりも、今もどこかで傀儡を操るために使われている仲間たちのことの方が気がかりではあった。ただ、仲間を助けるためにファイターの力は必須。自分の手で救えない以上はファイターたちを頼るしかない。どのファイターも一癖も二癖もある者たちばかりらしいが、それでも構わない。
スピリットと化した仲間たちが無事に解放され、元の世界に帰還できるのなら、何も文句はない。
ふと、ズボンの裾を軽く引っ張られていることに気付き、何だと視線を下げればカービィがいた。何か伝えたいことがあるようだがポヨポヨとしか言わないので、よく分からない。
マリオと話していた内容を考えれば妥当な答えへの行き着きつけると思い、何故呼ばれたのかと考える。話としては分岐先のファイターを救うということなのだから、戦うということだろう。
スピリットとしての力を求められているのだと思って武器を構えると、そうじゃないとかぶりを振られた。
「違うのか? じゃあ、俺に用があるのか?」
用事があるという言葉にカービィは大きく頷き、お腹と思しき部分を叩いて凛々しい表情を見せてきた。言葉は分からないものの、態度と表情で伝わらないわけはなかった。
「……ああ、よろしく頼むぜ。星の戦士さん」
カービィなりの任せておけという意思表示。仲間のことを考えている内に思いつめていた初代へ気遣っての行動だった。
初代はカービィの想いを感じ、ファイターたちに力を貸す。
今後も心強いファイターたちは更に戻ってくる。何も心配がることは無い。必ず、彼らが仲間を助けてくれる。だから今は、自分に出来ることをするのみだ。