Encounter with King hero

眠っているというのが、今の自分の状態を表すのには最も近い表現だと思う。しかし、心地よさは微塵もない。あるのは永遠に続く闇と、身体の自由が利かない焦燥感。現状として感じられるのは不愉快なものしかなかった。
自分には守るべき者が在る。失うわけにはいかないのだ。大切な人たちを、二度と手放しては──。
これは、心の叫び。彼らの傍に居たいという強い想い。生きる目的を無くし、使命にすがっていた頃とは違う、偽れない願い。
寝ている場合ではない。意識を覚醒させ、成すべきことを成すのだ。

 

どれだけ動こうとしても反応を示さなかった身体が、急に言うことを聞いた。本来であれば自分の身体であるというのに動かせないことの方が異常なのだが、突然抵抗感が消えたことにどうしたらいいのか分からなかった。
腕を伸ばし、何かを掴もうとしていた動作が反映され、何か近場にあったものを握りしめる形になった。柔らかい布を掴んだ感覚が手のひらから伝わってくる。とにかく状況を確認するため目を開けると、青い衣装が飛び込んできた。
青を見てとある人物を一番に思い浮かべたが、色の濃さや装飾がどこをとっても違う。だったら自分の間近くにいるのは誰なのか。十分に回復したとは言い難い身体を無理くり動かし距離を取ろうとすれば、相手は暴れ出したと思ったようで手首を掴んできた。
手の大きさから、相手は男だと分かった。分が悪いことを念頭に入れつつ敵の様相を視界に捉えるため頭を引けば、藍色の目が心配そうにこちらを見ていた。
心配するということは、敵ではないのだろうか? よく見れば自分は、瞳と同じ色の髪を持った男性に介抱されていたようにも見て取れる体勢をさせてもらっている。手首を掴まれた時も、痛みを与えないようにという配慮が感じられた。
「…………敵では、ない?」
今思えば、第一声としてひどいものだった。それでも、守るべき者が在る自分にとって、状況を把握することと危害を加えてくる存在の判断は最も優先すべき事柄であるため、この先もそれを第一にして行動することは変わらないだろう。
相手はこの問いに、面を食らったようだった。少し間を置いてから敵ではないと口にした。間が出来たのは嘘をつくためではなく、こちらが冷静に言葉を聞いてくれるかを確認するための、必要な時間だった。
「私を、助けてくれた?」
困っている人がいたら助けるのは当然だと、手を放しながら言われた。こんなお人好しがこの世にいるのかと思っていたら、男性は私の身に起きていたことやこの世界について簡単に説明してくれた。
話を聞いて、自分がまた異界に来てしまったことを実感する。記憶として最後に残っているのは、いつもの事務所で仲間たちとご飯を食べていた所までで止まっている。つまり、自分が巻き込まれたということは近場に居た仲間たちも──。
辺りを見れば、圧倒的な存在感を放っている光の珠が真っ先に飛び込んできた。あの元に辿り着くことが出来れば、きっと仲間たちと再会を果たせるはず。
「助けてくれて、ありがとう。私は目指すべき場所があるから、これで」
お礼もそこそこに、ゆっくりと立ち上がって肩を回し、二度足踏みをする。もう気怠さなどは残っていない。万全だ。
この世界がどんな場所であろうとも関係ない。自分がするべきことはいつも変わらない。大切な人たちと共に、元の世界に帰還すること。そのために戦うことが必要だというのなら、何も躊躇いは無い。
武器を確認すれば、レヴェヨンとノワール&ブランがそこに在る。何も心配はいらない。道も一直線に切り開いていけば、多少の障害は覚悟するにしても、手っ取り早く光の珠に辿り着けるだろう。
「何処に行くんだ?」
先ほどの男性に声をかけられたのかと思い、まだ何か用があるのかと振り返れば、そこには見慣れた人物がいるではないか。
「……初代?」
名前を呼べば、いつもと変わらない調子で返事をしてくれた。初代が経験した先ほどまでの内容を教えてもらい、自分一人の力だけでは先に進めないことや、スピリットとしてファイターであるものたちに協力をしていることを知った。
「そういうことなら、もちろん私も力を貸す」
初代がファイターたちのことを信用しているのが大きな要因になったことは事実だ。それを抜きにしたとしても、本当に少しではあったが先ほど言葉を交わした男性には不思議と人を引き付ける魅力を感じた。
だからきっと、仲間たちの中で自分が一番最初に助けられたとしていても、事情を知れば惜しみなく協力しただろう。
「私はダイナ。これからよろしく」
簡潔に自己紹介をすれば、助けてくれた男性がマルスと名乗った。彼もまた、大切な仲間たちを助けること、そして何よりファイターとして、打倒キーラを目指しているそうだ。
他にも、続々とキーラからファイターを奪還出来始めているので、だんだんと波に乗ってきているという。
「なんたって俺が力を貸してるんだから、これぐらいは出来てもらわないとな」
自信たっぷりな初代の言葉にマルスや他のファイターたちが笑みをこぼす。この輪に自分も入れることをダイナは嬉しく思った。
当然、初代とはまた違った戦術も期待出来るだろう。ダイナであれば、スピリットとしての力を遺憾なく発揮してくれるはずだ。