第1話

 私はちょっぴりエッチだという自覚がある。
 だから今日もこうして寝る前に大好きな彼のことを思い出して、イケないことをしてしまう。
「ふっ……あぁ……あっ」
 まずは自分を焦らすように乳房を優しく揉む。
 利き手は手慣れてた手つきで的確に心地よさを与え、そうで無い方は乱暴になってしまうが、この乱雑さが時たま気持ちの良いところを刺激するのが堪らない。
 乳房を揉むと隠れていた乳首が主張してくる。そうしたら親指と人差し指で軽く摘み上げる。
「あ、はぁ……レダさま……」
 レダ様というのは彼氏のことだ。
 実は彼氏と言っても年がかなり離れていて、周りには隠して付き合っている。出会った経緯は省くけど、彼の大人らしい一面に惹かれ、紆余曲折を経て交際にまで発展した。
 初めは、若いのだからもっと同い年ぐらいの子と付き合いなさいと断られたのだが……うん、色々あった。
「んあぁ、乳首……気持ち、いい……。この間、レダ様はこんな風に弾いて……ふあぁぁ!」
 前の情事を思い出しながら、彼の指の動きを真似する。
 それが気分を高揚させたのか、彼のことを想像しているからなのか、オナニーに使っている背徳感からか。まだ乳首しか弄っていないというのに、私のアソコはもう準備が出来ていた。
「我慢、出来ないっ……。ああ、レダ様、私のアソコ……見て……」
 居るはずのない彼がそこにいるかのように振る舞い、ズボンを脱いで下着の上から秘部を擦る。生地越しに与えられる快感に私は身を震わせながら、手の動きを速めていく。
 私が彼のことを様付けするのはもちろんオナニーをしている時だけだ。本人をそう呼んだことはない。
 これは自分が彼のことを心から尊敬しているというのもあるが、本当のところは過激に攻められたいという願望を満たすために過ぎない。
 私は自分がいじめられて悦ぶことを理解している。だからこの時だけ、自分で自分の気分を上げるために彼を様付けして呼ぶ。そしてこれがまた、悪いことをしているという背徳感が刺激され、私は興奮してしまうのだ。
「ひっぁ……! クリちゃんがおっきくなってっ、ああっ! そんなに擦ったら……イッ、イク! イッちゃうぅ!」
 果てる瞬間を見せつけるように、大きく足を開いて腰を震わせる。
 とても人様に見せられるような格好ではないが、このいやらしい体勢に私はさらに興奮してしまう。だから今ではオナニーをする時は、まるで見せつけるかのような体勢をしてしまうようになった。
 ……本当は、彼の前でもこうしていやらしい姿を晒して、それを責められたい。しかし、流石の私でもそこまでの踏ん切りは未だについておらず、こんなにエッチな女だということがバレて幻滅されてしまうのは、やはり怖かった。
「はぁ……あ……足りない、よぉ……。もう、一回……」

 ピンポーン。
 玄関のチャイムが鳴ったことで、私の意識は一気に覚醒した。
 こんな夜遅くに、一体誰? せっかくの余韻が覚めてしまい、今の私は不機嫌ですと顔に書いてあるだろう。
 ピンポーン。
 もう一度チャイムが鳴った。
 しつこいと思いながら、また鳴らされるのも嫌なので床に脱ぎ捨てたズボンを慌てて履き、愛液で濡れた指をティッシュで拭き取って急いで玄関扉についている覗き窓で外を見ると、そこには……。
「レダさん!? ど、どうしたんですかっ、こんな夜遅くに……!」
 まさか、彼氏がこんな時間に尋ねてくるとは思っておらず、私は慌てて扉を開けた。
「ごめん、こんな時間に……」
「い、いえっ。って、すごい雨……。レダさんもこんなに濡れて、とにかく中へどうぞ」
 オナニーに夢中で外の様子なんて全く知らなかった……。レダさんと職場の間に私の家があるから、それで立ち寄ったのだろうということはすぐに分かった。
「ようやく仕事が終わって帰ろうと思ったら、急に降られてしまって。……寝てた、かな」
「ううん、起きてたよ。タオルはこれで……あ、先にシャワーを浴びます?」
 彼は本当に優しくて、今でも彼女の家に上がるのは申し訳ないと気遣ってくれたり、普段のデートの時もエスコートしてくれる紳士な人だ。そんな優しくて大人らしいところに惹かれて私は彼のことが大好きなのだけど、理由はそれだけじゃない。
 その……、エッチの時もとても優しいのだ。
 私が気分じゃない時は絶対に無理強いをしないし、行為をしている時も痛くないかと気遣ってくれるだけじゃなく、必ず前戯と後戯までしてくれる。
 その時の彼はいつもの優しさだけではなくて、男らしく責め立ててくれる。これに私は心を溶かされている。
 なのに、これだけしてくれる彼に私は物足りないと最近感じてしまっている。
 原因は分かっていて、自分がとにかくエッチ過ぎるのが悪いのだ。先ほどしていたオナニーのように、もっといやらしい自分を見てほしいと考えてしまっている。
 十分すぎるほどに彼は私のことを考えてくれているのに、あまりの身勝手さに自分のことが嫌になる。だから一線を超えないようにと隠しているのだが、それを不満に思っている自分がまた嫌だった。
「タオルで十分だよ、ありがとう。……少しだけ、ゆっくりしていっていい?」
「うん。なんだったら泊まっていって。ちょっと狭いけど……」
 彼から家に上がっていくという提案はとても珍しい。いつもは私がちょっと無理を言って上がってもらうことが多い。そしてそのまま……何度か致したこともある。
「今日はそうしようかな。……すごく溜まっているみたいだし、ね?」
 抱き寄せられ、ドキリと胸が高鳴った。
 時折、彼は物凄い勘の良さを働かせる時がある。既に立っている乳首をこねられ、私は情けなく喘いでしまう。
「あっん! いきなり、そんなっ……ああ、あぁぁ……」
 すぐに私は腰砕けになり、彼の腕の中に収まる。彼はそれで気を良くしたのか、さらに乳首を扱いて来る。これによって私はあんあんと喘ぐことしか出来なくなってしまった。
「あ、ああん、あっ、あっ……ひぁ! んぁ、ひぃん!」
「こんなに準備が良い時は、オナニーしてた証拠だね」
「んん! そ、そういうわけじゃ! な、んでそう思っ……はぁ、んっ、あ……」
「知ってるよ。君がとってもエッチな子だって。……俺もやっと、踏ん切りをつけたんだ。だから今日は思う存分、望みを叶えてあげる」
 本当は俺、責め立てるのが大好きなんだと耳元で囁かれた時、私の身と心は完全に彼のものになったと感じた。
 手際よく私は脱がされ、下着一枚だけにされてしまった。そして彼は……。
「さあ、俺の前でオナニーして見せて。いつものように、いやらしく」
「そんなのっ……恥ずかし、い……」
「俺も手伝ってあげるから」
 言って、彼は私をベッドに押し倒し、M字開脚の形で足を固定してきた。
「や、やぁぁ! 見えちゃう!」
「下着があるから見えてないよ。ほら、自分で乳首をいじってみて」
 いつも自分で妄想し、彼にこんな風に指示されてみたいと考えていたことを、実際にされている。心から求めていた指示に私はいやいやと思ってもいないことを口にしながら、素直に手を乳首に伸ばして引っ張ったり弾いたりした。
「んはああ! やっ、あ、ひぁぁ! あふっ、レダさんに見られてると、こんなにも違う……!」
「気持ちいい? しっかり見ていてあげる。……ほら、アソコも擦って」
「そんなエッチな指示しちゃだめっ……! 指、止まらない! あっ、あっ!」
 言われるがまま、見せつけるようにあそこを擦ってオナニーする。愛液を吸った下着はぴちゃぴちゃとやらしい水滴音を鳴らしながら、激しく主張する。
 そんなアソコをレダがじっと見つめながら、もっとエッチに、もっとやらしくと言葉攻めしてくる。
「もっ、無理ぃ! イッ、イッちゃっ……!」
「早いね。いいよ、じゃあ俺の手でイカせてあげる」
「ああああっ! レダさんのゴツゴツの手で擦られたらっ……! イッ……ク! イク、イクゥゥゥ!」
 くちゅくちゅと激しく音を立てられ、あまりの気持ちよさに私は果ててしまった。肩で息をしながら必死に呼吸を整えている間、レダは優しく頬や額にキスをしてくれる。
「どうかな。いつもより激しく責め立てちゃったけど、気持ちよかった?」
「は、ひっ……。好き、です……。私、こういうの……」
「それは良かった。実を言うと、俺もこうやって責めるの好きなんだけど……ほら。過激だから……」
 ずっとレダも我慢していたことを知って、私はもっと早くから甘えてこんなエッチをしてもらえば良かったと思った。
 でも、今まで我慢した分をこれからもっと過激なエッチで埋めてもらえると思えば、それはそれで悪くなかった。
 私はもう、彼の虜になっている。
 これからはもっと、彼好みに調教されることを望んでしまっていた。