Fierce battle with machine weapon

ある基地の内部にて、一人のファイターとスピリットが機械兵器と戦いを繰り広げていた。機械兵器との戦闘を務めているのは基地内で救出した工作員。多様な武器の扱い方や知識のあるスネークと、彼に力を貸している初代。他のファイターたちは傀儡軍団と戦ったり、後方支援に回っていた。
対ファイター用としてキーラが放った機械兵器の名はガレオム。二足歩行を可能とし、腕までついている。巨体を生かしたパンチは、ただ振りかぶられただけだというのに破壊力が違う。攻撃は大振りなので避けるのは容易だが、当たることは絶対に避けなくてはいけない。
問題なのは巨体故に機敏な動作が出来ないため、速度を補うために搭載された武器の数々だ。移動速度を上げるジェット機能から、離れた敵を攻撃するための銃器と隙がない。こちらも手榴弾や追撃砲、そしてRPGなどの兵器を用いて応戦しているが、後一歩の火力が足りない状態だった。
戦いの最中、初代はガレオムが撃ちだすミサイルに既視感を覚えていた。黒いスーツケースから撃ち出される変幻自在の砲撃。ミサイル、マシンガン、レーザー砲……。数多くの武器に姿を変え、破壊をまき散らすのはあれしかない。
「災厄兵器パンドラか。機械兵器如きが魔具を扱えるわけがないとなると……」
ガレオムに力を貸しているスピリットこそがパンドラを操っているのだと想像するのは容易い。敵を倒す難易度が格段に上がってしまっているのは面倒だが、パンドラだと分かれば対策もとれる。いくつか変形する形態の中で、絶対に阻止しないといけないものが二種類。発動時の動きを見たことのある初代であればどちらであるか見極め、対策が取れる。
後は、スネークの身体能力と初代の動体視力が全てだ。発動の合図を見逃すのは論外に加え、妨害が遅くても発動されてしまう。
パンドラの情報をスネークに共有すれば、すぐに対応してくれた。敵が繰り出す大振りの攻撃は確実にかわし、大量に撃ち込まれる銃弾は初代から貰った情報を元にして事前に動き、対応する。
即席チームでありながら、二人は身体能力の高さで連携の粗をカバーしあい、ガレオムを追いつめる。
ガレオム自身は追いつめられたという実感を持っていない。しかし、スピリットとして力を貸しているあの男は危機を察したらしく、パンドラを大きく変形させ始める。
「ショウタイムだ!」
変形先を見切った初代がスネークに合図を送る。ようやくこの時が来たと、スネークは手元のボタンを押す。形を変えようとしていたパンドラが突然爆発し、黒のスーツケースに姿を戻す。うまく阻止出来たようだ。
パンドラに予めつけておいたのはC4爆弾。遠隔操作で起爆し、ミサイルを一斉射撃する形態──アーギュメント──を潰す。
一つ目の大きな危機は去った。パンドラはアーギュメント形態を諦め、続いてケースの隙間から光を見え隠れさせ始める。
「連続で性質の悪い形態を使おうとすんなよ……!」
パンドラが口を開け始める。溢れる輝きが徐々に大きくなり、基地全体が震えだす。
これは、パンドラのオーメン形態。今漏れ出している光はまさに災厄が起きる前兆だ。発動されたら最後、基地もろとも吹き飛ばされかねない。
どうにかしたいのはやまやまだが、スピリットである初代にはどうすることも出来ない。スネークが構えたグレネードランチャーがパンドラの開きかけた中に目がけて発射される。
果たして、間に合うか……?
パンドラの内部にランチャーが到達した時、凄まじい爆音とともに基地内を光が包み込む。後ろで傀儡たちと戦っていたファイターたちもあまりの眩しさに目を閉じるしかなかった。
ガレオムと戦っていた二人は当然のこと、基地の中に居た者たちは敵味方関係なく光に呑まれた。
「……どう、なった?」
ようやく目が開けられるまでに光が落ち着き、初代は急いで周りを確認する。スネークも同じように目を細めながら、状況把握に努めていた。
ガレオムが居た場所には災厄兵器パンドラを持ち、赤いコートを着た男がうつ伏せに倒れ込んでいた。男の周りには大量の鉄くずが転がっており、部品から見てガレオムの物であると見て取れた。後ろで戦っていたファイターたちも続々とスネークの元に集った。どうやら先ほどの光で傀儡たちが一掃されたらしい。
敵だけが壊滅した理由は分からない。パンドラを持った男が魂の状態でありながら抵抗したのか、それともパンドラとグレネードランチャーがぶつかり合った結果なのか……。
どちらも憶測の域を出ることはないが、結果は上々だ。初代は警戒しているスネークの横を通り過ぎ、狸寝入りを決め込む男の頬を軽く叩く。
「もっと優しく起こしてくれよ」
「何寝ぼけたこと言ってんだ。おっさんのお陰でえらい目に会う一歩手前だったんだぞ」
偶然が功を奏したとはいえ、最悪こちらが壊滅していたかもしれない。だというのにおっさんと来たら、状況もよく分かっていないのに寝たふりをするのだから、肝が据わっている以上に危機感がないとしか言えない。
「何してるの、おっさん。説明は道中でするから、とにかく立って」
ファイターたちをかき分けて初代とおっさんの元に来たのはダイナ。いつまでも起き上がろうとしないおっさんに、説明するからと言って腕を引く。
少しだるそうにしながらも、おっさんはパンドラを持ってようやく立ち上がった。
「……ま、これぐらいなら話を聞いてるうちに治るか」
おっさんの呟きは誰の耳にも届くことは無かったが、初代は気付いていないわけではなかった。
パンドラのオーメン形態の中にグレネードランチャーを撃ちこんだのだ。衝撃がなかったとは考えにくい。それでも自力で立ち上がり、こうして太々しく歩いていく姿を見て、大丈夫だと判断した。
怪我をしたなんて下手なことを言えばダイナが傷を移してしまうだろう。弱音を吐かせてもらえない環境だと困った笑みをこぼす。最も、ダイナがいなかったとしても弱音を吐くような連中ではないことも目に見えて分かっていることでもある。……自分も含めて。
とにかく、これで三人目。残りの四人も救出すべく、帰ってきたおっさんにこの世界やファイターのこと、そして自分たちのことを説明しながら、皆で基地を後にした。