Stand a step behind Ep.6

 三か所目の壺も封印した二人は次に向かう前に一度休憩を挟むことにしていた。
「変な液体ぶっかけやがって。おかげで服がドロドロだ」
 ダンテはそう言いながら銀色の髪についている液を払う。ダイナは両手を床に付け、頭をだらりと下に向けていてストレートヘアから滴る液体が床に水たまりを作っていた。
「はぁ……んぅ……ダンテ、この液……、まずい」
「飲まされたのか? 悪いが、口直しの水はないぞ」
「味、知らない。問題発生の意味。……すごく、身体が熱い」
 何度か色に当てられているダイナはこの身体の熱さが液体のせいだと判断した。触手によって体中に塗り込まれたダイナは自分の髪の毛が当たるだけで表情を曇らせていた。
「それで、俺にどうしてほしい?」
「何も。……ダンテも浴びていた」
「俺の心配をしてくれているってことか。ダイナの予想通り、俺も大分身体が火照ってるぜ」
 コートを脱ぎ捨て、ダンテはダイナの傍に寄りおもむろにダイナを抱きしめる。
「ふぁっ!? 触られると……ひぅっ、我慢、出来なくっ……あっ」
「ああ、俺も我慢できそうにない」
「んはぁっ……我慢、出来ない?」
「それに、お仕置きもしないといけないからな」
「えっ……ひあぁ! 耳、舐め……っ!」
 予想だにしない責めと、予想していなかった言葉にダイナは翻弄されていく。ダンテに身体を預けることしか出来ず、耳元でぴちゃりと唾液の音が鳴るたび、一際大きく反応してしまう。
「耳も弱かったんだな」
「それ、はぁ……ちがっ……うぅん! 液の……はひぃっ……」
 ダンテがくちゅくちゅとわざと音をたてればダイナは身を捩り、悶える。その姿に気を良くしたのか、ダンテはさらに耳を責め上げていく。
「ひあっ、あっ! あっ、あんっ……あっ……!」
 今までに耳を責められたことがないわけではない。その時は、少しくすぐったい程度でしかなかった。だが今はどうか? 色によって性欲が増えたのか、はたまた触手に浴びせられた液体のせいなのか、それとも両方か。
 どれが要因になっているのかは分からない。ただはっきりと分かるのは、今まで感じなかった場所ですら性感帯のようになってしまっているということだけ。
「ん、んんっ……! あぁ、あっ……はぁぁ……んぁっ……」
 もう身体に力の入らないダイナに、抵抗という二文字は浮かばない。断続的に与えられる心地よい快感に身も心も溶けきっている。そんなダイナの服を手慣れた様子で脱がせ、秘部に直接指をあてる。
「あぁっ! ひっ……! んぁっっ! ふあぁぁぁ!」
 ただ触れただけ。それだけで、ダイナはイッてしまう。ねっとりと耳を責められた身体が求めていた刺激。
「ふあぁ! あっ、あぁ! ああぁ……あっっ!」
 その刺激を予告なく与えられ、身体は歓喜に打ち震え、果てる。
「ひぃっ! ダメ……ッ! 耐えられ、なっ……!」
 ダンテはただ軽く、指を動かしている。たったそれだけでダイナは何度も、何度も果てる。
「ダンテ! 止め、あぅっ! 止めてっ……!」
 先ほどから身体がずっとビクビクと痙攣している。自分の身体が壊れてしまう。そんな恐怖が沸きあがり、ダンテに懇願する。
「ダイナは身体が丈夫だろ? これぐらいで根をあげるのか?」
「その丈夫、違うぅ! ああっ、またぁぁ……!」
 抗議している間も指を動かされ、快楽に流されてしまうダイナ。口はだらしなく開き、口角から涎が垂れる。
「……ま、ここらで許してやるか」
 何かに満足したのか、ダンテはようやく指を止める。おかげで助かったと、何度も肩を揺らしながらダイナは息を整えている。
「はぁ──……。はぁ──……。んっく……私の、身体の限界。ダンテは……知ってる」
「ん? ああ、そうだな」
「限界寸前……そこまでするときは、何か理由があるとき」
 日頃の情事でも、ここまで責め続けられることは滅多にない。いくらお互いに気分が高まっているとはいえ、敵地でここまでするのは何故か? ダイナはそこが気になった。
「俺以外の男には、興味ないんだったな」
「……? それは、事実」
「だがダイナは、そこの触手に何度もイカされてただろ?」
「……それも、事実」
 触手との行為の中に感情は一切ない。だが身体が反応し、絶頂まで昇ったのは否定できない。
「私の身体、かなり異常。あまり感覚がない場所でも、感じてしまう」
 ダイナは嘘を言わない。聞かれたことは必ず答えるし、そこには事実しか含まれない。
「それでも、ダンテ以外、興味ない」
 こんな事態に陥ってしまった以上、身体はかなり変わってしまっている。そんな中でも、ダイナはダンテのことだけを想い続けている。
「疑っていないさ。ただ、いじめたくなっただけだ」
「……そう。不安にさせて、ごめん」
「謝るなって。……そこまで話す余裕があるなら、挿入れても大丈夫そうだな」
「その見解は、否定っ……あっ! いつの間に……っ、あっ……はぁぁ!」
 話に気を取られ、完全に無防備だったダイナにダンテのものが挿入される。今までの刺激が可愛くなるほどの強烈な快感が、ダイナの全身を駆けあがる。
 引きはじめていた感覚がまた戻り、ダンテから送られる快感に抗うことすら忘れ、ただただ身を任せる。
「身を委ねてると、激しくするぜ」
「ふああぁん! ああぁぁ…あぁぅ! んひぃ、あぁ、ダンテ、なら……いいぃ!」
 グリグリと膣内を擦られ、ダイナはもうイッているのか感じているだけなのか分からないほどだった。それでも必死に意識を保ち、ダンテとの行為を感じようとしている。
 ただ相手をイカせるためだけの愛撫ではない。ダンテ自身も感じたいという、欲。その欲を満たそうとする動きが、ダイナにとっては嬉しかった。
 お互いが、お互いの身体を求めている。相手の身体を、心を感じたいという欲求が二人の気分を最高潮へと導く。
「……っ、ダイナ」
「ダンテ……! ダンテぇっ……!」
 名前を呼び合い、果てる。ダイナは完全に事切れ、ダンテにもたれかかった状態で意識を手放している。ダンテも少し疲れた顔色を浮かべ、ダイナを抱きしめたまま気付くと睡魔に誘われていた……。