過去の在り方

 Opening 01 Scene Player ──── アンジュ

 逃げるように職場から逃げかえって翌日。
 ほとんど眠れず疲労困憊の体に鞭打ち、アンジュは朝からある場所に顔を出していた。
 今日はブレイクの監視に関する定期報告の日だ。

GM:アンジュのオープニングはUGN支部局の中にある執務室から。他の人は登場不可です。
アンジュ:相手は支部局長かな?
GM:そうですね。珍しいことにここの支部局長は非オーヴァードで、初老のおじさんです。
アンジュ:ええっ。
GM:UGNは人類との共存を目指している組織ですから、こうした理解ある普通の人間と言うのはそれなりに貴重な存在なのです。そしてここ、つまりアンジュの上司である支部局長は当然戦闘などの現場に向かうことは出来ませんが、戦局の判断に関してはノイマンには及ばずとも人間の中では相当に高い知力を有しています。後、融通が利く。
アンジュ:なるほど? 融通が利く人だから二つ返事で私がブレイクの監視役に抜擢されてしまったと。
GM:いくらブレイクからの初めての提案だったとはいえ、彼の監視をするにあたってアンジュは実力不足だと言う他ありません。今までの成績、良くないですよね。
アンジュ:二人に再開するまでは力はほとんど使いこなせていないし、ろくな仕事振りではなかったです。
GM:でもその条件を飲んだ理由としてここの支部局長がアンジュを押したのが大きい要因です。ブレイクを下手に刺激したくないというのはUGN全体の総意でもありますけど。さて、今回の報告についてですが、ブレイクのこと、どこまで報告します?
ブレイク:おっと?
レダ:どこまで喋るかでブレイクへの対応が変わりそうな質問だ。
アンジュ:うーーーーん。ブレイクが平気で人の復讐に手を貸すような奴だって報告をしたら、当然UGN側は危険人物の中でも特に優先的に対応が必要な人物としてマークするよね。
ブレイク:だろうな。UGNは俺が何処にも属していないことは知っている。言い換えてしまえば、何処にでも属する可能性のある奴だとして見ている。まあ、事実なんだが。
アンジュ:でもこれ、私としてはUGNに黙っている理由があんまりない……。
レダ:前回のことがなければUGNよりもまだ私たちへの恩義の気持ちが大きいだろうから黙っているという選択肢もあったが、今の状態では……。
アンジュ:すまんブレイク! アンジュは全部喋るよ。唯一の本についての報告も全部しよう。
GM:分かりました。ではアンジュの報告を聞いた支部局長は眉間にしわを寄せながら言います。「そうか……。報告ごくろう。そのような状況でも君が無事で本当に良かった。……すまないね、もっと配慮ある判断をすべきだったと今の報告を聞いて、そう思った。……いや、遅すぎる感覚だな、申し訳ない」
アンジュ:「どういう意味でしょうか?」
GM:「ブレイクの監視役を一人で行うことはあまりにも危険だということだ。いくら相手側からの要求だったとはいえ、もう一度こちらから出向いてきちんと交渉するべきだった。これだけの危険な任務をアンジュ一人に任せたのは全て、私の責任だ」
アンジュ:「そ、そんなことは! 最終的に承諾したのは私ですし、こうして私は無事に戻って来れていますから」
GM:「確かに、本の中から脱出できたのはブレイクと、ブレイクの傍にいるレダというオーヴァードの協力があったことを疑ってはいないよ。しかしそれは彼らにとっても本の中から脱出するために必要な行為だっただけだ。とても、アンジュのためへの行為だとは思えない」
アンジュ:それは否定出来ないー!
GM:「急だが、アンジュ。本日をもってブレイクの監視役という任務を解く。短い期間であったが、ご苦労だった」
アンジュ:「えっ!? ま、待ってください! それじゃあ私はこれからどうすれば……」
ブレイク:早かったな。
レダ:アンジュとの関係が切れてしまう流れに……。
アンジュ:除け者にしないでー!
GM:「落ち着きたまえ。こんなことを言いたくはないが、仕事は他にもたくさんある。アンジュはUGNエージェントの一人だろう? 我々と共に仕事をする仲ではないか」
アンジュ:「あっ……」
GM:「大丈夫だ。アンジュを認めている者はこの支部の中にもいる」
アンジュ:「……はい!」
GM:「そうだ、もっと自信を持ちなさい。とはいえ、急に監視役を解除して彼の元に行かなくなるのも不自然だから、今日だけは図書館の方に出勤してくれるか? その後の処理はこちらで手配しておく。監視役をやめることについて本人に直接報告するかは一任する。こちらとしては、どちらでも構わない」
アンジュ:「かりこまりました」
GM:ではアンジュのブレイク監視任務が解かれたところでオープニングは終了です。

 Opening 02 Scene Player ──── ブレイク

 唯一の本が人工物であると確信している。だが問題は確証がないことだ。作っている瞬間を捕らえることが出来ればこれ以上単純な話はないのだが……。
 無論、それが出来ないから別の手段を講じる必要はある。
 それにしても、こうして力を狙ってくる輩の相手をするのは悪い気分ではない。良い暇つぶしになる。

GM:このシーンは職場へ出勤する前を想定しています。午前中にしたいことがあれば。後、他の人は登場不可です。
ブレイク:隣町に行ってみたいのだが、仕事が始まるまでに行って帰ってくることは可能か?
GM:用いる手段によりますね。それと、具体的に行きたい場所があるかでも変わりますが。
ブレイク:第0話で配達員が別の図書館からの書籍を運んできていただろう? あれを辿りたい。
GM:なるほど。ブレイクは配達員自体を見ていないのでその人物を追いかけることは出来ませんが、持って来られていた本であれば目を通しているでしょう。前回も説明しましたが、図書館の物であれば印字がありますので、それでどこの図書館から来ているか分かるでしょう。
ブレイク:その図書館が開館する時間に着ける時間帯のバスとかがあるならそれを利用するが。
GM:それでしたら行って帰って来ても遅刻することなく職場にいけるでしょう。ではこの間本を借りた図書館に行って何をします?
ブレイク:本を別の図書館に貸しだした時の履歴を見たい。どこの配達会社を使ったかの記録もあれば。
GM:それは……単なる利用客でしかないブレイクには調べられないですね。ちなみに、その本自体は元の借りた図書館に返っています。
ブレイク:ああ、そうか。では前回本を借りた図書館の司書であることを伝える。
GM:それでもカウンター奥にあるパソコンを貸してはもらえないですね。
ブレイク:仕方ないな。では≪ワーディング≫を使用する。
アンジュ;強引すぎー!
レダ:そこまでして調べたいのか?
ブレイク:俺たちはこれだけの時間があったにも関わらず、何の手がかりもない状態だ。流石に何かもぎ取りたい。たとえハズレだったとしても、ハズレという情報を得られるだけマシだ。
GM:では利用客はもちろんのこと、受付をしてくれている司書や後ろで業務している司書たちが全員、意識を失います。
ブレイク:「悪いね」さっさと履歴を調べる。データの調べ方は多少違ったとしても同じ司書だ。手間取るまい。
GM:ではブレイクは求めていた情報を手に入れます。どうやらここから三キロほど先に郵便局があるようで、そこの配達員が運んだようですね。
ブレイク:≪ワーディング≫を解除して図書館を後にする。まだ時間に余裕があるならそのまま郵便局に向かいたい。
GM:大丈夫です。ブレイクが先ほど調べて手に入れた情報にあった郵便局に来ました。ちょこちょこ利用客がいますね。
ブレイク:中に入る。
GM:窓口がいくつかありますよ。郵便窓口とか預金窓口とか。
ブレイク:ああ、いいよ。≪ワーディング≫だ。
アンジュ:滅茶苦茶だー!
レダ:本当にやりたい放題してる(笑)
GM:全員倒れますね。
ブレイク:「……ハズレか。それとも先ほどの図書館で≪ワーディング≫を察知した時点で逃げたか?」GM,配達用のバイクとかがあるだろう? それの残っている数を。
GM:三台ですよ。ちなみに、この郵便局は結構小さいです。
ブレイク:十分だな。ゲートもあるからいつでもここに来れるようになったし、後はこのバイク数の変動の仕方で読んでいくしかない。もっと確固たる証拠が欲しい所だが、今はこれで我慢だ。
GM:本当好き放題してくれましたね。ここでシーンを切りましょう。

 Opening 03 Scene Player ──── レダ

 レダは朝早くに墓地に来ていた。
 等間隔に並べられている石にはどれもR.I.Pの文字が彫られている。
 後はそれぞれ名前が刻まれていた。

GM:レダのシーンは墓参りです。他の人は登場不可ですよ。
レダ:あんなことがあったんだ。家族の墓参りをしようと思うだろう。では自分の家族の墓石の前に行くよ。お花も持っていこう。
GM:墓石たちはここの管理人によって丁寧に磨かれており、どれも綺麗にされています。
レダ:感謝しかないな。「……今回は、来るのが遅くなってごめん」

 そっと墓石を撫で、花を添える。
 この行為がレダの心を抉る。妻たちが生きていれば、することのない動きだから。

レダ:「…………。そこに、いるのかな」
GM:……返事は、ありません。
レダ:「ああ、いいんだ、それで。私は赦されないことをしたから」
GM:助けてと叫ぶ妻と娘を助けられなかった。それをあなたは自身の罪だと考えています。決して赦されない。最愛の人たちを見殺しにしたという事実があなたの心を抉る。己で、己を責め立てる。誰にも言われていない言葉を、己に浴びせる。……衝動判定です。目標は30。
レダ:達成値は15。
GM:判定は失敗。暴走状態になり、侵蝕率に2D点。
レダ:11点上昇だ。平均に近いから及第点かな。
GM:自らを縛る言葉を心の中で繰り返している内にレネゲイドが活性化し、あなたは暴走する。──だから気付かなかった。この墓地にはあなた以外にも人がいたことに。
アンジュ:これまずくない……?
ブレイク:しかし今の俺たちにはどうすることも出来ない。
GM:あなたは己の世界に入り込み、懺悔し続ける。助けてと叫ぶ妻と娘に。……では???がEロイス≪歪んだ囁き≫を使用。
ブレイク:Eロイスだと!?
レダ:……効果を、聞こう。
GM:レダが取得しているロイス、放火犯に対して抱いている感情を書き換えます。ポジティブは懐旧、ネガティブは無関心。表にするのはネガティブの方でお願いしますね。これにより、あなたは昨日の晩から憎悪の対象としていた放火犯への感情が薄れ、どうでも良くなっていく。そもそも何故そんな奴のために時間を使っていたのか、それすらも興味がなくなる。
アンジュ:復讐したいと思い始めた感情が、消えていくってこと……?
GM:そうです。今のレダにとってはもう放火犯など蚊帳の外です。そして憎悪を向ける対象がいなくなったあなたは……。
レダ:さらに己を責める、か。過去の事件に対して大きく感情を向ける対象は主に二つ。助けられなかったという自責と、理不尽なことを引き起こした相手への憎悪。だがその片方を失ったとなれば、当然もう一つの感情が大きく膨らむ。
GM:ここで???は≪瞬間退場≫を使用して姿を消します。そしてレダは墓石の前で半日の間懺悔し続け、疲れきった顔で出勤するでしょう。これにて全員のOPは終了。次はミドルです。