Fallen

何でも叶える薬

 業務が始まったと同時にブレイクは何も言わずに席を立ったかと思えば、一冊の本を持って帰ってきた。「今日対応するのはこいつだから、読んでみて」 渡された本を受け取り、表紙を確認する。 タイトルには『何でも叶える薬』と書かれており、ブレイクも言…

唯一の本

 ブレイクに危険書庫管理室での業務に誘われ、レダの許可が下りて次の日。 アンジュは逸る気持ちを抑え、まだ業務が開始されるよりも一時間以上早くから666階にある関係者以外立ち入り禁止の扉前でうろうろしていた。「早く来過ぎちゃったけど、遅刻する…

ブレイク

 本日の業務が無事に終わったアンジュは3階に来ていた。休憩時間に言われたとおり、レダの自室に行くためだ。 一か月前、初めてレダの自室に入った時はそこを自室だなんて考えには至らず、ただの事務所程度にしか思っていなかった。 だが今はレダの自室と…

不老長寿の薬

 時間が経つのは本当に早いもので、気づけば司書として図書館で働き始めてからもう一ヶ月が経った。最初は業務が終わった後は死んだように眠るだけの日々だったが最近は多少のゆとりも生まれだし、ほんの少しだけだが自室で本を読む時間が取れるようにまでな…

アーヴェンヘイム

 レダの家から出たアンジュは、歩き出す彼の後ろをついていく。「さて、世界で唯一の図書館であるアーヴェンヘイムについて、アンジュはどれだけのことを知っているか教えてくれるかな?」「あっと……。アーヴェンヘイムには世界中の本が集められます。図書…

新米司書

 世界で唯一の図書館アーヴェンヘイムでは毎年一度、司書試験が行われる。これに合格した者だけが図書館で働くことの許される司書になれる、まさに人々が憧れる試験だ。 しかし、この試験に受かろうと思うなら並大抵の努力では成しえられないことを覚悟しな…

世界の在り方

 人は死んだら、本になる。 そして人から生まれた本は人々に知識と知恵を与えるものとして重要視され、全ての本は世界でたった一つの図書館、アーヴェンヘイムにて管理される。 世界において、もっとも価値のあるものは本である。 この概念は不変の真理で…